『乙女の願い』
ようこそいらっしゃいました
お姉ちゃんたちの献立会議へ。
王子様ならいつでも歓迎いたします!
実は、王子様は
もうご存知かもしれませんが
私たちは今大変な問題に直面しているのです。
そう──それは夕凪ちゃんのこと。
つまみぐいをしてばっかりいる夕凪ちゃん。
お手伝いの途中でどこかへ行ってしまう夕凪ちゃん。
だけど本当は優しくてみんなを引っ張っていくこともある
私たちのかわいい夕凪ちゃんが
とってもすてきなりんご買出し大臣になったの!
ぱちぱちぱち。
ところが、ここ数日の天気予報を見て
みんながあわてたりとんだりはねたりしていることから
わかるように──
東京都に雪だるまのマークがつく
土曜日と日曜日。
いくら夕凪ちゃんがお手伝いをするのが珍しくても
夕凪ちゃんにも真っ白に積もる雪にも罪はないのに
あんなに一生懸命で元気な妹が
雪で転んだりしたらあまりにも悲しいと思うんです。
そして実は問題は
それだけではありません。
勘のいい王子様ならばもしかして
気になったのではないかしら──
りんご派のかわいい小さな女の子がいるのなら
みかん派のかわいい小さな女の子もまた
この家で健やかに暮らしているということを!
実はバナナ派も存在するとさっき聞いたのですけど
そのことを教えてくれた青空ちゃん一人だけみたいなので
明日のおやつはバナナで決まり!
ということにして何も問題はないの。
だけどりんごが足りないと
がっかりしちゃう子がずいぶんたくさんいるし
みかんがないと──
やっぱり、えーっという感じになりそうです。
常にたっぷり用意しておきたくても
少女たちと一人の王子様の食欲はとっても頼もしく、
たまたま八百屋さんは忙しいみたいだし
雪の中の買出しというだけでも心配なのに
この上さらに荷物が増えるなんて
考えただけでも──
ああ、どうか王子様!
春風のことを呼んで
荷物持ちとして連れて行く、
どこまでも自分のあとをついて離れるなと言ってください。
いや、離れようとしても
決してもう二度と手は離さないと
あなたの言葉があれば
春風はどこへでも行ける。
夕凪ちゃんが主役の買出しを
手伝う忠実で凛々しいナイト様に
これまた心から忠誠を誓います
お手伝い娘に週末は姿を変えてついていきます。
一緒に行けるなら
どこまでも──
そうだ、夕凪ちゃん応援メニューで
お仕事前の晩ごはんを豪華にしてあげるために
明日の放課後にでも買出しの下見を兼ねて
二人でお買い物に行ってみませんか?
春風の予定はちょうどその日は空いています!
明日はいい天気だそうですよ。