観月

『かぜひき』
北風小僧がやってきて、
あたりをすっかり
冷たくするものだから、
お外で遊びたがりの
ヒカル姉じゃがまず
風邪をひいた。
鍛えているから大丈夫だと
過信していたのが
いけない、というのは
がらがらの声でおかゆを食べていた
本人の言うところ。
そう、冬が来れば
いつ誰が風邪をひいても、
もはやおかしくはない。
たとえ冬になる前に
食べ物のおいしい季節に食い溜めをして
力を付けようとも、
あるいは、良い子たちが病魔から守ってもらえるよう
加持祈祷のおつとめを毎日続けても、
さらには、暖かくして好き嫌いなく食べて
お外に行くのをなるべく減らしていたって
人の体は
風邪をひく。
できることをしたら運を天に任せる部分だって
たくさんあるのが
人の世の常。
ヒカル姉じゃもこれから
栄養を取ってしっかり眠って
春風姉じゃの看病で治るのを待つけれど、
長引くかどうかは
誰にもはっきりしたことは言えぬ。
鍛えていても忍び寄るのが風邪なのだと
まさに証明されてしまったのだから──
というわけでしばらくは
家の中もなんとなく
物足りなくて寂しい感じになってしまう。
ヒカル姉じゃはしっかり休んでくれるであろうか?
部屋の中で眠ってばかりで
退屈しておらぬか──
待っているみんなが寂しがっているように
ヒカル姉じゃも一人では心細いのではないか。
おなかをすかせてはいないか──
兄じゃも風邪には気を付ける季節だぞ。
わらわも兄じゃも気を付けて、
みんながこれ以上はもう寂しがることのないような──
いつも元気でいられる冬にしなくてはな。