春風

『ラブずっきゅん』
今日も子供たちは大忙し。
追いかけっこで
勝てない子をついに追い抜いた。
小テストの補習で
いい点を取って帰ってきた。
探していた冬服が
押し入れの奥の段ボールから見つかった。
穴が開いてたけど──
教えてもらって
つぎあてをするんだって。
みんながんばっています。
小さな子供が
がんばっていると──
よかったねって思って
なぜか泣けてしまいます。
どうしてだろう?
大人になって失ってしまったものを
見つけるから?
一生懸命に
なることや──
結果が出るのを
恐れないことを──
ずっと楽しそうな声がやまない
この家では
当たり前みたいに見つけてしまいます。
そんなに簡単なことじゃないはずなのに──
世界のどこにも
すぐ転がっているようなものではない──
どうしてそんなに笑って
余計なことは何も気にしないみたいに
夢中になれるのだろう?
私も昔はそうだったの?
好きなものは好きだって
何の理屈もなく
言えていたの──?
いつも何かを教えられる
家族との毎日。
春風も──
勇気をもらって
みんなみたいに、
100点までとって帰ってきた立夏ちゃんや
にんじんが食べられたさくらちゃんみたいに、
怖がらないで
やりたいことだけと向き合って、
できなくても
ぶつかっていくことが
また──
子供の頃のように。
ああ、でも
考えるだけでどきどきしてしまうの。
せめて──
何かおいしい贈り物をもって
届ける口実なら、
勇気が足りなくて言えなくても
そんなに恥ずかしくないのかもしれないし──
王子様、もう少し待っていてくださいね。
どんなに大変で
今は無理にしか思えないことでも──
春風はきっとあなたへ──
あなたの──世界でたった一人の愛しい人の胸へと
飛び込んで行って、
あっ、もうこれ以上はだめ!
もう少しだけ──いつもがんばっているみんなから力をもらえたら
きっとあなたのところへ行くから、
それまでどうか──
情けなくて弱い春風を嫌いにならないでいてくれますか──