ヒカル

『お話の続き』
むかしむかし
あるところに──
そう言って物語は始まる。
なんとなく
自分に似ていて
お友達を思わせるところもあって──
ゆかいな登場人物たちは
それぞれの進む道へ
時には迷いなく、
時には押し流されるように
進んでいく。
どこの国も、いつの時代も
物語はそういうものだ。
生き生きと描かれる
人々のお話──
だとしたら春の季節を迎えて
それぞれの新しい道を
見つけ出そうとする私の家族は
どこかの誰かが物語を語るときの
登場人物となることもあるのだろうか──
とある誰かから見た
むかしむかし──
あさひは新しいベッドに
大好きなお兄ちゃんの匂いをつけることに
一生懸命。
春風は小さなあさひに
頼ってもらいたくて
オマエと同じシャンプーを買ってみて
今までとちょっと違うさわやかな香りの女の子へと変わるべく
新しく始める春の挑戦。
立夏はお友達に届けるお菓子の練習。
麗はお花見スポットの写真を記録して
春休み明けに届けられる学校新聞のお手伝い──
ついにこの家にも春休みがやって来る。
それで妹たちも
たくさんの時間を有効に使うべく
楽しいお話を聞かせてほしがって
ぴょんぴょん飛び跳ねておねだりすると
いうわけだ。
どのお話なら満足してもらえると思う?
やっぱり定番で間違いのない
王子様とお姫様が結ばれるお話がいちばん受けがいい気がするな──
あんまり私の好みとは違うし、
知識もあんまりなくて一から勉強ということだけど。
私もおそるおそる踏み出す
新しい挑戦だ──
春って、大変なものだな。