『寒い日のリクエスト』
キッチンの前にある
連絡用のホワイトボード。
この一年、大活躍でした。
春風ちゃんの手書きのイラストで
知らせる今日の献立。
あとから書き込まれる
味の感想──
ちょっと一言。
家族の気持ちを伝える
白いキャンパスは
年の最後の
もう一がんばりとでもいうように
毎日やむことのない
クリスマスメニューのリクエスト、
今日食べたいお願い、
お味への
ほんの一言──
お兄ちゃんも使ってくれてる?
ちょちょいと書き込めば
その通りになる、
もはや家庭用品の枠を超えて
魔法ではないでしょうか。
夕凪ちゃんが通い詰めるのもわかる
素敵な連絡場所。
どんな欲望を
あるがままにさらけ出しても
誰も文句を言わない。
純白の景色は
それこそを──際限のない願いだけを
待っているのだから。
最近は寒くなってきたから
鍋物のリクエストが多いですね。
やっぱりね。
蛍もそうだろうと思っていたんだ。
野菜盛りにした
湯豆腐も──
かまぼこがまぶしい
具沢山おうどんも
なんだって栄養いっぱい。
この家では
できないものは
何一つないと言えるほど
準備を続けています。
リクエストを受けるものとして当然のことです!
というのを言い訳に
あれも作れるこれもいいのだって
わくわくしていること──
見抜かれているでしょうか?
ああ、今日も
フレッシュだよって
野菜室で待っている子たち。
健気にこっちを見上げているよう──
こんないい子たちは
いちばんきれいに
飾ってあげなくてはいけないものです。
おいしくなれの
願いも──
すぐ叶うなんて
クリスマスには早すぎるのにねっ!