夕凪

『むーぶおん』
風が吹く!
子供が走る!
洗濯物を
両手に抱えて
日向はあっちだ!
いそげ──
お手伝いって
たのしいね。
竹ぼうきで
枯れ葉を吹き飛ばし
何より今は
わずかな日差しで
よく乾くように
物干しざおの周りを巡るのもだいじ。
だってよく
お手伝いをしたら
クリスマスメニューの開発のついでに
夕凪のリクエストを
聞いてくれるっていうの。
きのうはカツカレー。
今日はハンバーグ。
お姉ちゃんの言うことを
よく聞いて、
元気のありあまった風の子は
冬空の下を駆ける。
物置から
いいおもちゃが出てきたって、
かけっこに
誘われたって
みんなー、
夕凪は
大切な仕事を任されたのだぞ。
やりとげないと、
晩ごはんは
野菜尽くし。
そんなことになったら
小学生は元気が出なくて
もう立ち直れない──
お兄ちゃんも昔は小学生だったんだから
知ってるでしょ?
よく
お手伝いをして──
よく走ったら
願いは叶うということを、
人は大人になっても簡単には忘れない。
そんな気がする──
貴重な日向で
もっともっとかわけ、
洗濯物!
たたんで
重ねて
お兄ちゃんのお部屋までお届けしたら
よくほめてね。
明日は──かつ丼
寒い冬でも
風を切って進む
夕凪の願いは何でも叶う!