『密談』
これが私の
下から二番目の妹がとった
コオロギで
こちらが私の弟で
我が家の長男がとったコオロギだ。
まだいるんだな。
よく体の大きいのを
見つけたものだ──
これほどまでとは。
簡単なことではなかっただろう。
草をかき分け
石を転がし
泥にまみれて
人は目指すものをつかむ──
先に私に言ってくれれば
よく子供の時から知っている
穴場のスポットを
教えてあげてもよかったのだが。
知られざる
いまだ踏み入る者も少ない秘境が
ほんの少しの──ここからも手が届きそうな距離にまだまだ
隠れているということを
こっそり明かすのは
もしかしたら面白い体験かもしれない。
でも、目当てのものが
ざくざく出てくる秘密を知るよりも
自分で探しながら
その場所に近づいていく子供たちを見るのも
悪くはないと──私は知っているからな。
いつかは闇の中に滅びを知るまで
人は長いようでもあり
短くもある時間を過ごすのだ。
別に最短距離で目的地まで進まなくたって
無我夢中であがく
それを見ているのは
面白い──
それに、なにしろ
コオロギつかまえ競争で
おやつを選ぶ順番を決めたりすることも
まだまだ我が家にはあるんだからな。
秘密は秘密のまま
誰かがたどり着くのを待つのだって
人の儚い生の
かけがえのないヒマつぶしだと思う時もある──
これは上から二番目の姉の意地のようなものだ。
そういうようなものも──石ころを転がした下から
いつか見つかるかもしれないな。