吹雪

『ルーラー』
人間の集まる場所には
例外なく秩序が必要であり
秩序を維持するための約束事が決められることになっています。
これは私たちの家族も例外ではありません。
はたして人間の集団から秩序が消滅するとどうなるのか
私の知識量と経験からは正確な判断ができませんが
現時点では私自身には積極的に秩序を乱す大きな理由が存在しないため
家族の決めた約束に従うことを優先しています。
みんなで決めた約束は
何よりも優先される大事なこと。
食事の前によく手を洗う。
おやつを食べるときは注意が必要──
甘いものは虫歯の危険を高めるためにほどほどにする、
また、食べ過ぎてご飯が食べられないようになってはいけない。
食事の場には衛生的に不適当な品物を持ち込んではいけない。
食事に集中できなくなるので面白い本を持ち込んでもいけない。
たとえそれがとても学術的に興味深い宇宙の本や
人類の始まりの本だったり
霙姉に貸してもらえるか相談していた本が
ついに部屋の中から出てきたと渡してもらえたとしても
食事中に開くのは良くないことなのでしない。
怖い妖怪の話などは
学校の友人から聞いてきたばかりの
とても話したくなる刺激的な内容であったとしても
怖がって泣いてしまう子がいるといけないから
様子を見ながら、行き過ぎないように気をつけて。
あるいは後で好きな人だけで集まるなどして──
怖がりのさくらたちが何だろうと思って近づいてきていたりしないか
よく確かめてから話を始めること。
そういえば、さくらの様子ですが
食事に人形を持ち込むのも良くないと言われたためか
ずっと抱きかかえていた女の子の人形を置いてきて
今日は、その女の子の人形がが結婚する相手を占ってみたところ
後からやって来た男の子の人形であったという
そのあたりの詳しい話だけを持って食事にやってきました。
これは持ち込むことを禁止されていない内容で何も問題はありません。
そして私は
食後に開くつもりの本のことを少し考え
さくらが結婚式場の中央を華やかな衣装で歩く夢を話すように
宇宙に憧れるとしたらいつか自分自身も旅に出て
無限の道のりを誰かと移動して行くのだろうか、
それは知的好奇心を満たす刺激に満ちた夢のような旅なのか
あるいは遠くに発見がある可能性が高いとしても
私たちにとっては少し寂しい時間が続くこととなるのか、
または──
一緒に旅をする人がいるのであれば──
旅をする意義と
日々を共にしてくれる人を見出せたのであれば
いつか大人になった私たちには
進み続けることができる旅なのか
そのような話をしたら
みんなが寂しい気持ちを想像して
食事に集中できなくなるかもしれないので
胸の中に留めて
言い出さない──
そういった秘密を持ち込む食事をする日でした。
同じような秘密を持つ家族がいたとしたら
自分の経験をもとにして
見つけ出すことが出来るようになるのかもしれません。
興味深い話がありそうならば内緒話で──
というルールは守りたいと思います。
もうひとつ思い出した約束事として
食事に満足したことを感謝するために
多少大げさな方法で伝えてもかまわない、というものが存在します。
私の感謝の気持ちの表現は大げさなものは苦手なので
あらかじめ決まっているとおりの後片付けとなることが多いようですね。
約束事に従い、他の方法も模索していけたらと思います。
他の方法も模索していけたらと思います。
もしも興味深い情報や秘密を伝えてくれる人がいたら
私はどのような形で感謝を示すのだろうか──
その時が来なければわからないことなどを考えることもあります。