『たたんでとじて』
毎日増え続ける空箱。
お菓子の箱
おもちゃの箱
お届け物の箱
ティッシュの空き箱
レトルト食品の外側の箱。
とっておいて
切ったり貼ったりして遊ぶんだと
みんなが持っていくの。
そんなに──
必要になるものなの?
どうせまた放り出して
そのへんに転がしたままにしておくんでしょう!
とは
私が言わなくても誰かが言うから別に。
怒ったりはしない。
ただ、気になるの。
人気の空き箱。
無限の遊び方を生み出す錬金術
そんなに飽きずに持って行くのはいいけど
しまうときはどうするんだろうって。
だっていつも
私の部屋は、必要な物が決して充分に揃うことだってないというのに
それでも手に入る分だけで
捨てるには忍びない空の箱がうず高く積み上げられて
困り果てて腕を組んで考え込む私のことを
独特のすっきりとしたシャープな顔つきや
愛嬌があるラインの先頭にある
運転席のきらめく窓が純粋な瞳で問いかけてくる。
次はどんな人たちを運んで行くんだろう、
移ろう季節のどの瞬間を走って
めまぐるしく変わる街並みを見つめながら
いつまで変わらずに力強く走りぬくことができるんだろうって
誰にも声は聞こえないかもしれないけれど
私には──
まあ、そういう思い込みをするときもあるの。
好きだから。
その健気な子たちにどんな返事をするかなんてどうでもいいわ。
ただ、これからのことで
友達とバレンタインの話をしたときに
手作りチョコを交換するのは
先生に見つからないようにするべきだろう、とか
チョコを作った経験とか
リボンのラッピングだとか──
これからやむをえず
用意をしておく分や、捨てるのも踏ん切りがつかなくてとっておくのが
どんどん増えていくのだとしたら
私と立夏ちゃんと小雨ちゃんの部屋はどうなっていくのか?
遠い未来の先送りにしていた課題が
今鋭い刃となって喉元に突きつけられる。
濡れたように光を映すその刃先で
いつか覚悟を迫られるのね。
もう整理整頓という概念を手放し
必要なものがすぐには出てこない部屋で生きる覚悟を。
どうでもいいけど私は
なぜチョコ作りの経験が豊富だなんてことを言ってしまったのだろう。
几帳面に部屋を維持することから解放されたら
見栄を張る自分も捨ててしまえるかもしれないのに
私はまだ何もあきらめられない。
さて今日、書いたことに問題がある感覚をはっきりと整頓したら
後から線を引いて塗りつぶしてなかったことにするかもしれないわ。
なにもかも思い通りに考え無しの発言は残らず全てなかったことにできればいいのに。
小雨ちゃんに空き箱の箱の上手なたたみ方を教えてもらったの。
私、自分でだめにしてしまいそうで
ずっと踏ん切りがつかないままだと思うわ。