『イリュージョン』
子供の時からずっと
そうであるように、
なくしものをして
部屋中を探すと
いつも思うんだ。
次からはこんなに大変なことがないように
ちゃんと片付けておこうって──
どれほど繰り返し、
何度反省したって
結局同じ。
また部屋をひっくり返すような
大仕事だ。
どうしてだろう?
人間として生まれ、
学ぶことを知っているのに
頭が良くても
気が利いても、
人は何かをなくし
探すのだ。
きっともう、
そういうふうにできている。
決まっているのだ。
原因を探ってみても
解決にならない。
洞窟に住み
寒さに震えて火を囲んでいた頃と
人間は何も変わらず、
しまったはずの場所にないことを繰り返して
悔み続けた──
そうに違いない。
でないとあまりにも
説明がつかないではないか?
ものがどこかへ行ってしまうこと──
いつも大変な思いをして探すことに。
人がこの世界にある限り
片付けることを
どうもうっかり忘れるということに──
観月のおせんべいは出てきたみたいでよかったな。
こんなときの喜びを共有するため
私たちは家族で過ごし、
そして時にはうっかりするのだろう。
今日も我が家では
物はなくなり続ける。
だが探そうとする者がいる限り
見つかった時の喜びもまた絶えないはずなのだ──
まあ、寛容さは
いつか私が何かを失う時のための下心だ。
やがて来る
避けられないその時のために──
見つけ出す喜びを
共にすることができると
伝えていきたい──
苦労して見つけ出したお菓子の味はいつも格別だ。
この喜びが我が家から消えることはないのだろう──そう願っておこう。