春風

『その時春風は』
うと……
うと……
──
はっ!
だ、だめ!
誘惑に負けないで、
春風!
たとえ──
蛍ちゃんが気持ちよさそうに過ごしている
日なたに並んで
のんびりお話をしながら
私だって体を休めてもいいと
誘われたって、
春風は王子様に作ってあげたいごはんが
たくさんあるし──
かわいい妹たちが
遊んでほしそうなときには
絆を深めたいし
一緒に手をつないで
王子様を探したら
とっても楽しいって教えてあげたいし、
やることだらけの
春休みなのに
……
それなのにどうして
こんなにもまぶたが重くて
手足には根が生えたよう。
春風はもう
あらがえないのかしら──
お昼寝するまで
日なたに捕らえられて逃げられないなんて
油断をしたせいで
春風はもう──
ああ──
どこかから王子様の声が聞こえるのは
もう夢の中なのかしら。
私の愛する人はどうか──
あなたの春風がかっこよくなくて
だらしない寝顔をしていても
すぐに忘れてくれたらと願っています──
でもどうせ願うなら
この場所で一緒に……なんて……
ぐうぐう。