観月

『あまいあまい』
今日も良いお天気で
お庭ではしゃぐ子供たちの声は
雲一つない空にどこまでも届きそうで
終わりがないと決められたかのように
途絶えることはなく──
それでも冷たい風に追われながら
家に戻ってきたら
まだ遊び足りないような顔をして
好奇心いっぱいにキッチンを覗く。
おそるべき体力なのじゃ!
そういうわけで、疲れを見せない子供が
興味を持って見つめるのは──
次から次へと新しいことを試す腕前と
チョコレートの生まれる眺め。
お料理上手の名を競ってでもいるのか
ただ夢中になったらそうなのか
かわいい形とつやのある色は
整列して
送り出されて
試食のお皿に乗せられ
歓声で迎えられる。
人が集まるにはちょっと狭いキッチンで
きれいな指先が踊ると
うれしくならない者は
おらぬのじゃ。
いいことばっかりのバレンタイン前、
今が一番楽しいのかもと笑う準備期間。
どうしてこんなに
やる気いっぱいで情熱的なのか、
それは絶対に失敗なんてできない
本当のお祭りの日が──
ついに迫ってきているためなのじゃ!
それで蛍姉じゃは
かわいい服を選んだり
ラッピングのリボンをみんなの服にも結んでくれたりする。
あまりに希望者が集まってリボンが足りなくなってしまうので
今年のバレンタインは
リボンで自分を飾るのは禁止!
本来のラッピングに力を入れて
贈り物だけで勝負!
というおはなしが
お料理も包みも苦手そうな氷柱姉じゃから出たという。
練習したくてリボンを多めに残しておきたいのではとの疑問と
もしかしたらもう練習して自信があるから
チョコを贈るだけに限ったら
誰にも負けるつもりがないのでは!?
との疑問を
無邪気な子供たちが本人にぶつけたら
ななな、
なにをいってるの
きょうみないしっ
だそうな。
わらわは兄じゃにあげるチョコレートに
興味がすごくあって
考え出すと止まらない、
隙を見て氷柱姉じゃに相談すると
楽しい意見の交換が止まらないのじゃ。
逃げようとする氷柱姉じゃの裾をつかんで
子供たちだけの内緒の相談みたいに元気に──
みんなの声はキッチンにこだまする。
まだまだこれから本番が近づいて
うるさくなるのだろうと
わらわの神秘的な予感が告げているというのに──
具体的には、
いったいこれから
何が起こるのか?
どれほど情熱的な炎がめらめらと激しくなってゆくか、
それはわらわにもわからぬことなのじゃ。