『家族の掟』
え!?
立夏ちゃんがついに
春風お姉ちゃんにもらわれていってしまったの!?
ああ、やっぱり。
いつかこうなるかもしれないとは思っていたの。
空いている人手を見つけたとき
春風お姉ちゃんの目は鋭く輝き
ぎらぎら野生を思い出すかのように
狙いを定めて逃がさないの。
視線が届いたその瞬間に
もう逃げることはかなわない……
覚悟を決めた獲物は自分から倒れ伏して
その身を捧げるしかないというのが
さっき同じように捕まって連れて行かれた
霙お姉ちゃんの説明だけど、
まあ、そこまでものすごい感じではないけど
やっぱり春風お姉ちゃんの明るさとリーダーシップと
いつもやさしい笑顔は
ついついみんなを虜にしてしまうものですから。
なんだかんだでみんなついていくようになるんです。
でも、春風お姉ちゃんのご用でおいしいものを作るのに人手を取られたら
今度は蛍が探しても
誰もいないじゃありませんか!
新しいおやつ作りに、
イベント用のケーキの試作に、
手があればあるほどありがたくて
それはもう涙が出るほどありがたい
人手不足の台所に
春風お姉ちゃんの背中をついていく足音だけが聞こえる。
寂しいジングルベル……
でも!
足りないものがあるときは
工夫をしなければ
やっていけないんだもの!
たとえば
まだ春風お姉ちゃんが見逃している戦力を
なるべく早く蛍のお手伝いに約束したりもできるし
連れて行かれた子たちだって
魅力的なおやつのプレゼン次第では引き込めるかも。
あとは、同じ仕事ばかりが続くと
疲れますよね、
そういうときに味を見てもらうタイミングなんかも見つけ出したらどうでしょう?
蛍のほうに興味が向くかもしれない。
あわただしい年の瀬に
ますますばたばたするのもあれなので
そんなに蛍の目が光るというわけではないのですが
家族の顔を眺めて
ひとくふう。
疲れた時にお休みする飲み物も用意して待っています!