『雨音ゆれる』
やさしいリズム。
たんとんたんとん
かたたたき。
小さな子供の頃に
みんなができたお手伝い。
ぽんぽんぽん
おふとんたたき。
お日様の匂いでおふとんは柔らかそう。
私たちは一生懸命に叩いて
大きなお布団を運びにお姉ちゃんがすぐにやって来るのを
待っている。
夢中になっているうちに
それはもうまもなくのこと。
ぱたぱた
はたき。
さっさっ
おどるほうき。
歌にあわせるみたいに
おそうじもおぼえて
そして──
今日の蛍は
雨続きの貴重な晴れ間に
みんなで干した洗濯物を
ひとつひとつ畳んでいる真っ最中。
そろそろしまう夏服を
この夏一緒に過ごした感謝を込めて
たたみ、
タンスに入れて
やっぱりまだ使うような気がして取り出したりする
そんな雨の休日です。
小さくこっそり歌を歌いながら
ぱたんぱたんと声に出して畳んでいるけれど
洗濯物を畳むときって──
こういう音に合わせて、でいいのでしょうか?
音が出るほど大きい服は少なく
小さなみんなの──
わりとすぐ畳める
ちょこんとかわいらしい夏服──
が、多いもようです。
こういう
せんたくものたたみにしっくりくる
ぴったりの歌。
よく蛍の歌う歌は
たいていは──
春風ちゃんやヒカルちゃんから教えてもらっていて
春風ちゃんやヒカルちゃんの歌う歌は
海晴お姉ちゃんや霙お姉ちゃんが知っている。
海晴お姉ちゃんや霙お姉ちゃんは──
自分で考えたのでしょうか?
それともママから?
それでもママも
海晴お姉ちゃんも霙お姉ちゃんも
洗濯物を畳むのにいい歌は
歌っていなかったので
蛍の記憶を辿ってもこういう時の歌は出てこないんです。
うーん。
ぱたんぱたん。
でもお姉ちゃんたちに教わった歌を参考にして
小さくて頭のやわらかい子供たちは
勝手に歌を作っているんです。
蛍もいろいろ発明した気がするな──
ごろんごろん、
くすくす
ごろにゃーん、
などです。
だから蛍が教えてあげられた
氷柱ちゃんや立夏ちゃんは
きっと蛍が知らない歌をたくさんひらめいていると思うので
聞いてみたら気がつかなかった答えが出るのかもしれません。
蛍がとても思いつかなかったような
洗濯物を畳むいい音──
それがわかったらきっと
楽しくなる気がするの。
窓を叩く雨だれの音ばかりが調子よくて
私が一人でよくわからない悩みを抱えているなんて
なんだかよくないと思いませんか!
別に解決してもしなくてもあんまり変わりない悩みかもしれないけど
頭のいい氷柱ちゃんなら知っているはず。
ぜったい知っているに違いない!
いい答えを蛍が学んだら
あとでちゃんとお兄ちゃんにも伝えに参りますね。
雨の音よりきっと楽しそうに歌えたらいいね。