立夏

『マヨネーズのうた』
行こう行こう
買いに行こう、
冬の終わりの
早い日が暮れる前に
マヨネーズを買いに行こう。
マヨネーズがあれば
キャベツはすっかり千切りになってお皿に並ぶ。
キュウリも輪切りで
しまいには──
みじん切りのタマネギとピクルスで
タルタルソースもできあがる。
子供たちの好きなものは
いつだってマヨネーズによく合うから
この時期の嵐みたいな風を追い越して走っていこう。
いつものお店に
マヨネーズはあるのだから──
それは蛍おねーちゃんが
たまごとお酢とあといろいろをかき混ぜて
マヨネーズが作れると言い出さないうちに。
ハンドブレンダーをどこにしまったか
思い出さないくらいの加速で
お出かけの支度をすませて
夕方に備えて軽くマフラーを巻くまで急いでしまおう。
だってなんだか
よく晴れた日のちょっと涼しげな夕方を
ちょっと歩きたい気持ちだったし
金曜日だし
おだちんでおやつはひとつまで買ってもいいし
いっぱいに白い花をつけた並木が
どこまで続くか確かめろと
誘っているんだもの。
道の先にあるのは
マヨネーズがおいてあるスーパー。
もうすぐ桃色に染まる芽をつけた枝の並び。
春が来たというよい知らせ。
急いで帰って
ちょっと汗をかくくらいの陽気が来たと伝える春の使者が
はしゃぎすぎたり
しないうちに──
生まれたばかりの春が投げる日差しが
駆け足を覚えてどこかへ行ってしまわないうちに
買い物バッグをマヨネーズでいっぱいにして
お手伝い娘は帰って行こう。
体中からお手伝いをしたい気持ちが噴き出している間に
お皿洗いと妹たちをお風呂に入れるお仕事まで
終わっているといいのにねー。
つい勢いがつきすぎてオニーチャンまでぴかぴかに洗ってしまうより先に
収まってしまわないように
スーパーのスタンプカードも出しておいて
おなかをすかせたみんなを待たせない子が走るよ!
今日の晩ごはんを何か聞くのを忘れて出てきてしまった──
早く帰って確かめるのが楽しみだね。