『おもちの行方』
あーっ!
あああーっ!
まじで!?
おもちがない!
走り回って
どこを探しても
おもちがないよーっ!
きょろきょろ。
おかしいな?
戸棚にも
冷蔵庫にも。
こんなに情熱的に追いかけているのに
リッカに返事をするものはない。
お正月も終わりかなーとは
少し前から思っていたんだけど
でも、あんなにおもちがあったから
そんなすぐなくならないよーって
春風おねーちゃんもホタおねーちゃんも言ってたの!
あっ!
でも霙おねーちゃんは
全てのものに終わりがあるとか何とか――
これは違うか。
たしか、胃袋に入るすきまの終焉とかで寝転がってただけだし。
きのうまではよく見たよ。
四角く切って分けた
白いおもち。
つきたてを冷まし、
のばし、
粉をまぶし、
切られていった
あの小さくてかわいいやつらは
もう
いないのかなあ――
今日は三つは食べようと
そればかりを考えて帰ってきたのに
おもち受け入れ態勢のおなかはどうなってしまうの?
なになに。
おなか。
オニーチャンがあーんってしてくれたら
ケーキでもいい。
だって。
おっ
ナイスアイデア!
なんかそのために早く帰ってきたような気がしてきたよ!
そうかぁ、呼んでいたのはおもちじゃなくて
おもちのようなおなかか。
なんちゃって。
しばらくさよなら、お正月。
ありがとう、おもち!
また来年になったら
ますますかわいくなる
リッカの振袖姿を見せてあげるからね。
オニーチャンがいちばん先ね!
もちもち。
それにしても
このおなか――
本当におもちのやわらかさに
ひけをとらない。
かつてないほど
ちょっといい揉み心地!
まあいいや。
ケーキを三つはいくらなんでも怒られるから
お手伝いしながら味見でちまちま食べよう。
おーい!
おおーい!
ホタおねーちゃん!
オニーチャンがリッカとケーキを食べたいんだってー!
つくってつくってー!