立夏

『忍び歩きの日』
こそこそ──
きょろきょろ──
んんっ!?
ち、ちがうの
オニーチャン。
リッカは決して
つまみぐいに行くところでは
ないの!
そりゃあ、通り道で
ぜひどうぞって感じのおやつが
置いてあったら
それはもうしかたがないけど──
って、そんな話じゃなかったネ。
そう、明るく能天気なリッカにしては
めったにないことに
人目を避け
影を踏み
誰にも姿を見られないようにとおそれる。
あんなにみんなにまとわりついて
遊んでほしがっているリッカがなぜ?
ついにテストで
まぼろしの──
あの0点をとってしまったというの!?
なんてことは
ないんだけど。
赤点回避も慣れてきた感じだもの!
じゃあ今度は
リッカはまた
小雨ちゃんのクールで味わいのある
かっこいい眼鏡を
自分もかけてみたくなったりした?
ううん、でもそれは
ママに頼んだり
海晴おねーちゃんと
雑貨のお店を歩いたり──
似合うのを探し始めているからなあ。
おしゃれだったら
オニーチャンはほめてあげたらいいよ。
まあ、今日の怪しい動きは
多少はおしゃれに
かわいくなるための話ではあるの──
きのうのおうち身体測定で
ちょっと意外な数字を確認した
リッカちゃんは。
これからがんばって自分を磨くから!
と、ホタおねーちゃんにしおらしくして見せても
聞いてもらえなかったということで
ぜったいこれから
きれいになるというのに
あのサイズではまずいでしょと思って
記録を書き直しに行くところだよ。
ホタおねーちゃんがしまっていた
桃色の春らしいメモ帳──
どこにしまったか
だいたい覚えているような気もするんだ。
見つけたらちょっと
走り込みもしたいけど──
なんかドキドキして心臓を鍛えている感じもあるし
今日はいいかなあ?
だめかな?
とりあえず、最初の目的に向かってみるとしよう──