観月

『ハンカチ』
ゆかいな連休の後半は
あのせっかちだった真夏の日差しとくらべて
だいぶ肌寒い始まりとなりそう。
このごろはだいぶ薄着から選んだ
特に大好きな服の
かわいいポケットに──
いつもかくれている折りたたまれたハンカチは
白いのも黄色いのもおしゃれな桃色であろうとも
吹き出し続ける汗を大忙しで拭ってまわった。
しかも、晴れているから
洗ってもすぐ干せる、たちまち乾く。
汗っかきの子供の空いたポケットが恋しいみたいにとんぼ返りをする。
よくはたらくハンカチなしではひとときも過ごせぬ
連休の始まりであったな。
ところで──
朝からお休みの日はどったんばったんほこりをたてる
小さな子供たちが
何人も何人も──
東から明るい光の届きはじめたお部屋から全速力でやってきては
遊んでくれる相手を探して大騒ぎ。
そこで兄じゃや姉じゃたちはこっそり相談をしたと聞いた。
なんとあのうるさい子供は
わくわくしたりハラハラしたりするテレビが映っているときは
そっちのほうへ釘付けになるというので
何か映画でも借りてきてみんなで見ようと決まったらしく
子供部屋にもリクエストを聞く小雨姉じゃがお使いに来た。
まわりを囲んでわあわあ騒ぐ声を
はたしてどれだけ聞き取れたかは知らぬが
この子たちが口や体を動かすのも忘れて
じっと集中している瞬間があるそうな。
兄じゃも見たことがあるかの?
マリー姉じゃがお姉さんぶってみんなの先頭を走ったりもせず
さくらがおいおい涙も涸れずに泣いたりなどもない。
まるでなにかの前触れのような
月の側にひときわ輝く星が教えるしるべのような奇妙な眺めがあるならば
わらわも一度は見てみたいのと思うのだが
どうもそういうときは
わらわも夢中になって周りが見えないようなのじゃ。
それが、本当なら子供たちを静かにするはずだった作戦が
なんだか姉じゃたちの間で話が盛り上がって
せっかくなら切なくて涙を誘う映画も見ようという話になったそうな。
そういう面白い映画もあるのかのう?
子供たちが未体験の世界を見つける連休の始まりじゃ。
朝晩はもうひとつ上着も欲しいくらいの頃だが
こうなってくるとハンカチの出番はまだまだ休みなく続くのであろう。
乾かない洗濯物が積まれてしまうのか
はたしてみんなでいっせいに小雨姉じゃに伝えた話はどこまで通じているのか
どきどきすることだらけのお休みが
またしても押しとめきれずにやってくるぞ!