観月

『窓拭き大臣』
世の中の人間は
二種類に!
というのはともかく、
わらわは
窓拭きを始めると
止まらないほうじゃ。
見よ!
ぴかぴかに磨いたとたん
光を照り返し
輝くこのガラス。
ぎやまんの名で呼ばれたころからはじまり
子供のおもちゃ箱に詰め込まれるのまで、
芸術品としても
珍重される理由が
わかるであろう。
こんなにきれいなものを
磨き上げる腕前──
家族で喜ばれ
街にも名が知れ渡り
天下に勇名を轟かす窓拭きの達人となるのも
もうすぐじゃ。
と、いう
ごっこじゃ。
子供でも役に立ち
ほめてもらえて
もしかすると世界一なのでは?
そんな気分になれる。
年末には時々ある。
おもちを
よくかんで食べる名人。
寒い日に
お風呂を沸かす名人。
そして今、
子供たちの間で
うわさになるのが、
はたして誰が
いちばんおうちを
ぴっかぴかにできるのか!
廊下や階段、
電灯に──
蛇口にお鍋にお釜にたらいまで
きれいにするのは
技がいる。
さすがの姉じゃたちにはかなわぬ──
その点、ガラス窓なら
できそうだぞ!
ちょっとがんばれば
家族でいちばんも夢ではないかも!
見よ、こんなに
きらきらにできる──
兄じゃはわらわの窓拭きを見たか?
きゅっきゅっ
きゅっ。
手が冷たくても──
お役に立ちたい
わらべたち。
星がきらきら暗くなるまで
遊んでいた昨日のように──
誰にも負けないと
夢中になって
年の瀬はお掃除じゃ!