観月

『冷気』
遠く南のかなたから
穏やかでない風が近づいているという。
みんなが楽しみに予定を話し合った連休が
次の週末まで近づいているが
海晴姉の話を聞くとどうもお天気は期待できないそうじゃ。
木立を揺らす風の様子を眺めたり
さえずる小鳥や足跡もなく踊るけものの噂話に耳を傾けると
まだここでははっきり確かではない不安な気配が
大きな海に波を立てているとどこからともなく聞いたと
ひそひそ話をしているな。
せっかくみんながお休みになるのに
残念だとは思うが
わらわもまだまだ子供なのでどうにもできぬ。
兄じゃと姉じゃの意見を聞いて
おうちでご本でも読みながら過ごすことを考えるのが
今週の子供たちのお仕事となるであろう。
あらしが吹いて
みんなの大事なものが飛ばされたり
困ったことが起きねば良いが
こればっかりは対策をしっかりしておくしか
地上の人間にできることはない。
お外のお掃除や片付けも今週はいつもより真面目にやらねばならぬ。
全員参加の大仕事となるであろうな!
兄じゃはお庭になにか
置いたまま忘れている大事なものはないか?
風で吹き飛ばされたら
おうちとみんなが恋しくなっても
良い子で迷子の案内所に行ったりはしないし
さみしくて泣いて待っているということもない。
どこかへ行かないように気を付けるしかないのじゃ。
強い風が来たら
わらわも飛んでいかないように兄じゃの手を強く握って離すまいぞ。
家の中にいるから意味がないとしても
心細いときはそういうものじゃ。
みんなが期待する
決して離れぬ大事なお仕事を
その時になったらよろしく頼むぞ。