ヒカル

『珍騒動』
いい天気が続いて
刺激が足りないと思ったら
小さな子は自分で刺激を調達しに行くようだ。
花の咲く裏山調査隊は
虫がたくさんいて逃げ帰ってきたので
今の人気は演劇ごっこになるみたいだな。
雨や嵐が来ないのならば
降っているという真似をして
よく晴れた青空に向かい
勝手に暗雲に嘆き
もうすぐ持ち前の明るさで晴れさせてみせると
宣言することになる。
それらしい歌を即興で
情感を込めて歌うんだ。
みんなけっこう上手いよ。
歌も、演技も
すぐ入り込んでしまう。
普段から暗くなるとオバケが出るような気がしてしまう
思い込みの強い性格が
今回はいいみたい。
最初は恥ずかしがっていても
まわりで面白がりながら応援する人がいるから
私も──変なのって思ったけど
見てる分には飽きないんだ。
もちろん困ったこともあって
まだお昼なのに月明かりに浸される夜が来たとコーラすするから
まぎらわしいことに雲が出てきた瞬間が重なって
小雨や海晴姉は窓から見上げている。
昼寝の途中だった立夏たちまで巻き込まれて
どうもこうして見ているほうは面白がっている騒動が続くと
あまり長く続きそうにないブームという感じだな。
そうなったらその時で仕方がない。
でもそれまでは家の中は
みんなが好きなことを演じている通りに
虹子はいちばんのお姉ちゃんだし
さくらはお嫁さんになる夢をかなえて
マリーと観月はお気に入りの服を交換するだけで
十二単のお姫様とエキゾチックな砂漠の女王になるんだそうだ。
姉妹の誰かがつきあって
私たちは
ロボットということになる。
インプットされた目的は誰かを守るためになったり──また別だったり。
難しいことも考えず余所見もせず
ただ純粋に目的へと向かうだけのロボットか。
うまくいったときの喜びも、失敗した時の悲しみもないはずなのに
切なく人の心をひきつけるのはなぜ──?
うーん、ドリルやキャタピラの迫力とかかな?
かと思ったらいつのまにか
人間たちに遊んでもらいたいお人形に変わった。
人懐っこい動物にもなる。
きょろきょろしたり羽を広げたり
休むときは誰かの側で甘えている。
少し休んだら
きっと、今度は甘やかそうとしてみたくなる順番。
暇をもてあまして一日見ていたからな。
いつも気分次第で憧れる何かに
ちょっと勇気を出すだけですぐ変身できる特別な日。
何も特別なことが起こるはずのなかった
祝日でも記念日でもなんでもない日に
突然あたりは──
前触れもなく誰も予想しないうちに
なんでも叶う世界に変わってしまったらしいんだ。