真璃

『夢見た景色』
今日もすっきり晴れて
マリーのお帽子の上は
雲ひとつない青空。
庭や公園で遊ぶ子供たちの声が
透き通った青に吸い込まれてゆくの。
ああ、気持ちのいい日。
お外で遊ぶっていいものね。
大人のお姉ちゃまたちは家の中で忙しそうだけど
ちょっと様子を見に来るときには
いつもにこにこ楽しそうになって戻っていく。
なんだか春の陽気から元気をもらったようね。
多少は大変なことがあっても関係ないくらいなんだから
子供たちがこの美しい眺めに
あらがえるわけがないのよね。
千切れるくらいかわいい腕を力強く振ってはしる。
今年も過ごしやすい季節がやってきた──
春休みがいいお天気でよかった。
でも、でもね……
乙女はわがままだから
ドラマというものが欲しくなるときもある。
それは退屈とか
倦怠とかを知らないなにものか。
情熱や闘志で
自分自身が光を放ついきもの。
つまりどういうことかといえば
風と
雨と!
かみなりと──
そんなおそろしい全てを洗うような、
それは厚い雲を払う隠しきれない燃える太陽のようなたましいよ。
具体的に言うと
そうねー
新鮮さいっぱいで
新しい遊びとかねっ!
なんか春休みも始まったばかりなのに
同じ遊びばかりで飽きちゃった。
たまには土砂降りの雨を傘で受け止めたり
雨上がりの庭に足跡をつけたりして
泥だらけの花壇なら小さい子たちもお手伝いをしてくれると思うし
なんだか気分を変えたいの!
いけないことだってわかってる……
海晴お姉ちゃまもお天気がよくて予報が楽だーって喜んでるし
マリーひとりの望みでみんなを困らせたらいけない!
というか晴れは好きだけど
せっかくお休みになったのに
フェルゼンはみんなからあっちこっちに引っ張られて
二人の時間も持てないんだもの。
そろそろお花見の予定も決まると思うけど
向かう場所はどこでもかまわないから
すぐ見つかるとしても
一緒に手と手をとって逃げ出して
誰も見たことのない二人だけの景色を見つけ出したいわ。
まあ、そのときのことはその時に考えるとして
マリーと遊びましょ。
楽しくなれば──
春だからってのんびりしていられない
嵐と花吹雪が舞う刺激的な日常を
マリーとフェルゼンならつかみとれるような気がしてくるわ!