立夏

『学んだり教わったり』
どうもひとり、真面目な子がいると
春の緩んだ空気も
いつまでも緩みきっていられない。
集中して勉強を続けたあと
すっきり晴れ晴れした顔で帰ってきたときの
妙なうらやましさ!
麗ちゃんはそんな顔はしていないってつんとして言うけど
立夏にはわかる。
うれしそうだネって。
なんかいいことには鼻がきくんだもん。
だから最近の家の中の流行は
もうお昼寝ではなくて
そういえば何か新しい学年に進む前に
やり残したことがあるような、
それならじっとしていられないの
そわそわ感だよ。
オニーチャンにも
伝わるでしょう……
リッカが近づくときの……
ほんのりと
ほら
焦げた匂い。
あと、鼻の頭におしょうゆがついたり
手のひらまで汗をかいてお風呂へ走っていったときの
お姉ちゃんにおねだりして使わせてもらっている
大人のボディソープの匂い。
あっ、しまった!
そっちのいい匂いは
おたかーいのをもりもり使って泡だらけになったのを見られたから
もう使ったらだめなんだよ……
リッカ、子犬のように耳を伏せてしまいます。
しゅーん。
だから、きっと近いうちにお花見に持っていくためのお弁当の匂いばっかり
するとおもうよー。
ほら、どうだ。
ほらほら。
ぐりぐり。
あー、それにしても
味見だけなら
何も言われる前からできるのに
なんでお料理をするぞーとか
面白そうな本を読むぞぉとか決めても
いつも休憩している姿が見つかって
根気が続かないっていつも笑われるんだろう?
よく寝ることも食欲も
本能を腕力でねじ伏せて初めて現れる
とっても貴重な
あきらめずに努力するリッカの顔。
あたたかくて過ごしやすい時期限定で
偶然にもはかない桜の季節と重なると
本気の時間は
みじかいなってイメージしかなくなっちゃうよ〜。
ま、ともかく
寝てばっかりいるのも飽きたし
ちょっとは自分を褒めてやれることをしたいぞ!
という感じになったのは一人じゃないのか
けっこう活気付いている気がする家の中。
みるみるふくらむ
勇気とやる気が
いつか花をつけますように!
お昼寝用のタオルケットがさみしそうにたたまれていても
今のリッカはきのうより少しだけ
むずかしいこと、まだ試していないことでもかまわないと──
やりたい気持ちがふくらんでいくのです。