立夏

『ファンファーレ』
どいてどいてどいてー!
あぶないー!
どしーん。
……けがはなかった?
もー!
オニーチャンてば
立夏が走り出したらとまらないことくらい
ちゃーんとわかってくれなきゃ。
なにしろ今日は特別な日、
どっちを見ても雰囲気はそわそわ
いい気分。
元号
オメデトー!
きのうまでの平成が
目が覚めてみると
令和に変わっているなんて
こんなエキサイティングな経験は
一生に何度もできるものではない──
なんだかそんな気がするな!
というわけで令和記念
お祝いパーティーの準備で
お姉ちゃんたちは忙しいから
リッカもつられて理由もなく走っていたというわけ。
別に元号が変わったくらいで
大騒ぎなんてしなくてもいいんじゃないかって
クールな意見も確かにあった。
でも!
なんでもいいから盛り上がりたい年頃なのだから
多数決の結果で答えは決まり──
海晴お姉ちゃんが豪華な夕食会の開催を
有無を言わせぬりっぱな声で
堂々と宣言したよ。
リッカも隣の小雨ちゃんの手を握って
賛成意見のときに一緒に手を上げた甲斐があったヨ。
でも、反対側の手を麗ちゃんが握って
反対のときも上げていたから
変わらないかなあ?
小雨ちゃんが素直に自分の意見を言える令和になるといいね。
こんなにすごいことが起こった日は
とびっきりのおいしいものと
楽しい出来事に囲まれて
大笑いをしていなくっちゃいけないと
乙女たちは知っている──
だからオニーチャンにも教えてあげないと!
ほらほら、
用事がなくても走っているくらいでちょうどいい。
はじまりの今日を笑顔でいられたら
これからずっと楽しいに決まってるもの。
知ってる限りのいいことを
今日だけに全部詰め込みたいなら
オニーチャンの手もぎゅっとつかんでいないと
いけないから。
ほら、もっと楽しいところへ
リッカが案内してあげる。
いいにおいのするところや
にぎやかな声がするところは
こっちだよ──