氷柱

『クリスマスツリーにおねがい』
はい、どーも。
嫌われ者の氷柱が来たわよ。
どうも近頃
心無い声をよく聞くというか──
年末になってますますきびしく注意する
氷柱が現れたみたいな言葉が
廊下を歩いていてもドアから漏れてくるというか。
だめっ!
氷柱ちゃんが来るよ!
小さい子に言い聞かせる妖怪みたいな扱いに。
うるさいのはしょうがないでしょ。
まだまだみんな言わないとわからないんだもの。
私がみんなを引っ張っていかなきゃ
クリスマスも年越しもままならないのよ。
厳しくするのは間違ってない!
と、思う。
なるべく青空が泣かない程度に。
そうよ、私が責められるくらいでうまくいくなら
鬼にでもなんでもなるっていう──
多少の不公平感はこらえていくの。
いちばん上の海晴姉様は
わりとちゃらんぽらんなわりに
あー大変だー
つかれたー
なかよくしないとだめよー
しくしく。
とかね!
なんとかなるって考え方で、場当たり的なのよね。
苦労が多いのは誰もが知っていて
そんな海晴姉様でも
なぐさめてほしいーってじだんだを踏むのを
みんなが暖かい目で見守るんだから。
私だって少しくらい言ってもいいはずだわ。
怒りたくて怒っているんじゃありませんって。
たまに──
年に一度くらいなら?
とか。
だめかな。
こういう時に海晴姉は
気晴らしにいっぱい遊んで欲しいと
下僕を連れまわすのよね。
……
私はそんなつまらないことはしないから
もっともーっと頼りになる
サンタさんに願うわ。
そうね──
疲れたときにとる甘いものでも
クリスマスツリーに吊るして置いてくださいって。
お菓子の靴が増えていたら
サンタさんが私の行いを見ていた結果。
多すぎたら──きっと多すぎるだろうけど──
残しておいて、分けて食べればいいんだし。
でも──お菓子を散らかさないようにってうるさくなるのかもね。
下僕がきれいに食べるなら
鬼か妖怪が一休みしているところに
勇気を持って近づいてみたらいいんじゃない。
ちょっと多めに残すかもしれないから
下僕が持っていく分にはみんな歓迎するでしょ。
クリスマスが近づくなら
本当はやっぱり
笑顔の子が一人でも多く増えるほうがいいに決まってるわ。