立夏

『尋ね人』
あっれー!?
テーブルの上でほかほかと湯気が揺れる
この時間に
麗ちゃんはどこに行ってしまったの?
どうやら、氷柱ちゃんが目撃情報を聞きあさったところによると
みんなで遊べるおもちゃを探すわ! とかわいいことを言って
きりりと決意に満ちた顔で静かに傘を広げ
物置へと歩いていったのを見た子がいたらしい。
その後、ほくほくした顔で何かの箱を持ち帰って
お部屋に戻っていったところを見たとの話も──
そのあと
なんで消えた!?
かわいい麗ちゃんを
リカ見てないー!
小雨ちゃんによると、感激したように
鉄道の日というのはどこに行かなくても
気持ちの中にあればそれだけで
鉄道の神様がいい子に贈り物をくれるんだってはしゃいでいたとか。
リカ、鉄道の神様なんて知らない……
そんなサンタクロースみたいなおじさんなの?
雨の日はどこにも行けなくなって
休日が重なってしまったら
暇をもてあました子供たちはおやつをさがす。
そのせいで、ホタおねーちゃんは一日ずっと台所にいて
冷蔵庫からあらわれる食材を厳しい目でチェックしては
こっちは煮物、こっちはおやつの材料、
こっちはおやつの工程を途中からおかずに流用できますよと並べていったの。
楽しかったなあ。
楽しすぎて、最後にはホタおねーちゃんがしまったーって叫ぶくらい。
しまったー、ハロウィンの衣装作りにとりかかれなかった!
スカートもズボンも超ミニのスカートも魔女のお帽子も
試着してもらってかわいいところを観察する日が遠のいたよー!
だってさ。
おーまいがー!
と、リカがその横でよくわからないで笑っていましたとさ。
ホタおねーちゃんならぱっぱと作ってしまいそうなのにネ。
麗ちゃんも来ればよかったのにー。
ゆっくり時間をかけてお手伝いができた日。
リッカと氷柱ちゃんは落ち着いてやればけっこう頼りになるって褒めてもらえたんだよ。
仕方ないから麗ちゃんは
明日のお手伝いは、今日はあんまり見せてもらえなかったかわいらしさの埋め合わせに
試着担当を任されることになりそうです。
リカが決めたから
決定!
それにしてもどこに消えたのかな?
誰かのお部屋へ遊びに行って
ベッドで眠り込んでいるのでは、って話し合っているの。
困った子供だ!
もしも捕まえたら首輪とかつけておいてあげてね。