『窓辺のメロディ』
氷柱ちゃんのお部屋からはチョコレートの香り。
かくしているの?
それとも好きな人にあげたくて
今は秘密なの?
そわそわ誘われる
甘いひそかな香りの正体は
飾りのない小さな花瓶に
ひっそり咲いた淡い色。
にあわないな!?
あんなに自己主張が強い氷柱ちゃんなのに。
窓辺の花をお友達にして
誰にも言えない思いを打ち明けるなんて
イメージじゃないが。
いいないいな!
かわいいな!
リッカもほしいな!
甘い小さなお友達。
一体何があって氷柱ちゃんはみやびな趣味に目覚めた?
なにかいいことあった?
想像もつかないぞ!
氷柱ちゃんの小さなお花畑。
でもまあそのへんに
バラやひまわりが咲いていても
なんだかやかましい!
とか無茶なことを言い出すお姉ちゃんだから。
なんにもない殺風景な部屋の景色に
思い切って最初の彩り
といったところかな!
蛍おねーちゃんと一緒のお部屋で
半分は咲き乱れるシルクの森。
もう半分は氷のような冷たいセルロイド。
じゃあ、あれだもんね。
目覚めたかー。
そうかー。
教えてもらったりしたのだろうか。
おつきあいのしかた
そだてかた
心なごむ窓辺のつくりかた
などなど。
それは楽しいことだっただろう。
女の子たちの秘密の相談。
うん。
なんだかつられて
こちらも火がついてしまいそうだな。
そういう話だったら
地道にコツコツが誰より得意な
小雨ちゃん
麗ちゃん
ふたりとも
おいで!
リッカのすぐ近くにいる自慢の妹たちの
お話を聞いてあげよう。
さあ!
お花の咲かせ方
語ってみて。
おしゃれなコーデと
オニーチャンの意外なかわいさみたいに
思いっきり語ってしまって。
つたが伸びていく
プランターの白はなんていうの?
紫のは?
リカが育ててもいいかなあ?
だめ?
水やりをして
毎日飽きるまで眺めるんだー。
できそうでしょ?
きれいなプランターひとつもらうまで
ひとつくれるっていうまで逃がさないよ
リカにもできるって言ってもらって
かれんなちいさいのを
みんなで顔をくっつけあいながら眺めるときまで──
いっぱいおねだりして
ちょうだい、
おしえて、
みてみて!
あつまって!
おねがいしてもいいでしょ?
ねっ!