小雨

『むしかご』
夏はせみやかぶとむし、
かまきりやちょうちょがいて
わんぱくな女の子たちが追いかけても
ひらひらと逃げていきました。
一生懸命捕まえたあと、
かごに入れておいて中をのぞきこもうとしたときに
すいすい手のひらを抜けて離れていったりもして──
きゅうりやかぶとむしゼリーを入れておいてあげても
ずっと同じ子と仲良くはできなかった。
そして、とうとう今では
何もいないままの時間が長く続いたむしかごも
きれいに洗って、水気を干してお片付け。
一足先に物置へ戻ったむしとり網ともうすぐ並んで
しばらくはお休みです。
また来年もみんなが元気で
むしを追いかけてくれたらいいですね。
小雨はおそらく手伝えないまま──
木陰から応援だけでもできたらと思います。
小さい子たちにも
またいつか、かっこいいむしがいっぱい出てくるといいねって
話してみるんですけど
どうもむしとりの道具などを
物置の取り出しやすいところに置きたいようで
こたつやストーブが取り出せないと言っても聞かないし
もしかしたら冬が来る前に
もう一度、激しいあの季節を迎えるつもりなのかもしれません。
あとほんの少しの間に
急に寒い季節が近づいてきて
ぶるぶる肩を寄せ合いながら長い間を過ごすとは
とても想像をしていないらしくて、
またすぐ出番がやってくるみたいにむしかごをみんなで調べているの。
それとも小雨が勘違いをしているだけで
冷たく凍える頃なんて別に少しもなかったのでしょうか。
ふふっ。
そうですね、小雨もこの先のことなんてよくわからないですから。
来年、これから、こうなってほしいって願うときにも
怖がることばっかりで、悲しい想像にひとりでしょぼんとしています。
きっと考えすぎの小雨よりも
明るくて楽しそうなみんなのほうがずっとしっかりしているの。
さみしそうなむしかごに
やがてにぎやかな声が集まって
子供たちがはしゃぎ出すと
小雨はすぐ横でそれを見ながら
ちょっと怖いなっておびえたりしないで
一緒に喜んであげられるようになると──
来年まで待たずにそうなれたらいいな。
それは本当にうれしいことなんです。