小雨

『大急ぎ』
ふう、
ふうふう、
ま──
まってええ……
お、お兄ちゃん、
あの、その、はあはあ
あの──
わがやの元気な
ちびちゃんたちを
どこかで
見かけなかった?
もともと体力が
ありあまっているのと、
家にみんながいるから
遊んでほしくてはしゃいでるのとで──
もう、誰も止められない
子供たちと化しているんです。
あの無邪気に
汗を流す笑顔が、
やがてへとへとに疲れて眠るのを
待つだけ──
その間に、
一緒に遊んでいた
海晴お姉ちゃんがソファでぐったり
休憩タイムを取ることになり、
お役目を引き継いだ霙お姉ちゃんはなんと先頭に立って
走り回るようみんなを上手に誘導している。
後はその場にいた小雨が
後ろのほうについていって様子を見ながら、
息を切らした子を順番に連れて行くのが
計画だったはずなんだけど。
遊んでほしい気持ちは
想像を超えていて、
ついに小雨を振り切っていきました。
家でも学校でも
のんきに本ばっかり読んでいる
小雨では──
遠く引き離されるばかり。
毎日体を使って
大きなお姉ちゃんたちに相手をしてもらっている子供たちは
もうなんでも
遊びのことではわがままを言いたい放題、
できないことなど
ないみたいです!
青空ちゃんにじちゃん、
さくらちゃん観月ちゃん、
マリーちゃん──
普段はおとなしそうな子だって
お休みの日にお兄ちゃんやお姉ちゃんがいたら
全力です。
もしや
おとなしいのが当たり前になった小雨も
小さい頃はやんちゃだったりしたのでしょうか──
あんなふうに体中を使って子供でいる時間が
少しもなかったとは
妹たちを見ていると考えにくいですものね。
そう思うと、
小雨だってもうちょっと
やれるかもしれない、
昔は走っていたかもしれないんだし!
と、ほんのり元気が出るような気がしてくるんです。
今はもうなくしたあの頃のパワフルさに
追いつくのはまだ大変そうだけど、
待っているとしたら
小雨が行ってあげないとかわいそうだもの。
あ、でも
小雨よりもお兄ちゃんが追いかけてあげるほうが
喜ぶのかな──
みんなお兄ちゃんが大好きだもの。
小雨もお兄ちゃんを
追いかけて走るなら──
もっと元気になれそうです。
息を整えて
もう少し遠くへ。
小雨が今では行くことのない
場所であっても、
急いで追いつくようにしたいんだから!