小雨

『なげきの』
わあっ!
とおどろいて飛び起きたら
同じお部屋の立夏ちゃんがベッドから落ちて
麗ちゃんがもそもそと起き上がってきて
なんだかもうしわけない……
なんて経験をしたこと
お兄ちゃんはありませんか?
小雨は怖い怖い夢をたまに見ます。
起きた後でもなんだかまだ動けないような。
特にこの時期は
暗くなるのも早いからなのでしょうか。
それとも
病気の予防のために
必要なお話を聞いているだけで
できるかなあって不安になるのがいけないのでしょうか。
ちゃんと帰ってきたら手を洗ってくれるのか、だとか。
小雨が必要以上に心配して
ありえないほど怖がっている間に
みんなはそんな小雨の横をすいすい軽快に駆け抜けて
毎日良い子で予防に取り組んでいます。
だから──
氷柱お姉ちゃんがよくなってくれたのに
またすぐ体を壊す子が出てしまうのは
怖がりの小雨にとっては途方もなく恐ろしい立ち向かうなんてできない夢。
でもそんな話をみんなに聞いてもらうと
よく夢占いでは悪い夢を見るのが決して悲しい未来を示すのではないと
そういうお話も聞きます。
だから大丈夫だと。
悲しい重いばかりする経験が続くわけではないと。
くわしくは──
ものしりの観月ちゃんや
相談に乗るのが得意な春風お姉ちゃんや
女の子っぽいテーマには敏感な立夏ちゃんに聞いてみてください。
小雨ではどうも
こういうとき
みんなが明るいことを言ってくれてうれしかった、
とってもとってもうれしかった!
としか言えないんです。
今、それしか出てこなくて……
それでもまだ
誰か親しい人が寝込んでしまう夢を見たときに
夢は夢で
きっと悲しくない、
ようやく言えるようになってきたのに
ベッドにいて
さみしく人の声が遠いお部屋でじっとしているしかない子が
実は小雨だったことに気がつくと
なんだか妙な説得力を感じて現実味があるので困ってしまうんです。
ああ、小雨ならしょうがない
こういのって
小雨だったらあるかもしれないもの。
みんなのはしゃぐ楽しそうなパーティーの声が
はるかな彼方からつながる細い糸のようにかすかに聞こえて
遠すぎて、近づくなんて考えようとしたところでどうしてもできない。
そんなとき
そっとドアが開いて光りが差し込み
ささやく声で顔を見せてくれたのは……
夢はいつも夢で終わります。
本当はずっと一人でおとなしく眠っているのが当たり前なのは知っているけれど
小雨がベッドにいるくらいなら
まあそんなに悲しくはないのかな?
普通に現実を受け入れている夢でした。
夢なのに、いけませんよね。
とにかくせっかく近づく楽しい冬休みとクリスマスの鈴の音。
どうにかきわどいところで現実の冬に立ち向かい
みんなの助けもあってついに
何も問題のない健康体で日々を送ることができました、となるように
小さくて端っこで目立たなくてみんなに気付かれないと知っていても
がんばろうと思っている小雨なのです。