『いけないことひとつ』
わかっているの。
隠しても
しらばっくれても
秘密の全てがやがては明るみに出るということ。
知るべき人のところに確実に答えは届き
特に知らなくてもいい場合はまあ──そういう場合もあるわ。
なくし物はやがて戻ってくると探したときや
はしたなくも下着に穴が空いていたこと、
あなたが知らなくても解決しているのはよくある。
だけど今度だけは
迷惑をかけてしまったから。
天が全てを見ているように
太陽の厳しくまぶしい光に胸を焼かれる気持ちになるように
どうか知っていてもらいたい。
私がいけなかったの。
だって
にゃーんって心細く鳴いているでしょう?
ちょこちょこ
ついてきてしまうから放っておけないの。
家の外だから
清潔さを考えたらあまり褒められることではないと知っている。
もちろん
常識はいつだって正しいわ。
ちっぽけな子供の反論を許さない。
でも、首輪もついているって
油断してしまったから。
最近だと似たようなものに馴染みがあったし。
定番の猫娘立夏ちゃんがなりきるつもりらしいの。
もうすぐ成長したら虎になるって言ってたわ。
調子に乗ってやりすぎないといいけど。
そんな事情もあって──
ううん。
言い訳なんて今さらね。
しでかしてしまった事実は消えないんだから
今はただうつむいて
何もかも告白する以外にすることはない、
そんな気がするの。
撫でてしまったら
ついてきてしまった
虎ぶちの小さい猫。
もう子猫でもなさそうかな──
あと、なんだかちょっとふてぶてしいというか
声で同情を引こうとするわりに
こっちが近づいたら
なでてもらって当然みたいにおなかを見せて
最初から少しそうかもしれないって予感はしていたけれど
人をたぶらかす魔物が
ハロウィンになってとりついたのか
もともと小悪魔だったのかもしれない。
よその人の飼い猫にそんなことを言ったら怒られるか。
今日は玄関前で騒ぎになってしまったのは私のせい。
それだけは申し開きのできない真実だわ。
居つくといけないから食べ物はあげないようにみんなにも注意したし
触ってしまったら後で手を洗うようにしっかり見ていた。
あんまり近づくと猫はふつう嫌がるから、とも言ったんだけど
いるのね。
あんなに乱暴にもみくちゃにされて
それで本望のような顔をしている肝の据わった子が。
誰にでも愛想がよかったみたいだけど
あんなにすりすり懐かれるなんて
一生に一度くらいの経験でいいかもね。
えっ?
ヒカル姉様は
何も関係ないわよ。
帰ってきて騒ぎを見ていたときも
特別な反応をしていたようには見えなくて
猫は気まぐれだから引っかかれないように気をつけてって、それくらい。
気まぐれな生き物なら
日頃からずいぶん見てきたつもりだった……
さすがにそこまで言われる本物は違うのね!
のんびり姿を消してしまった後も
またすぐに背後から甘えた声が聞こえるんじゃないかって
何度も振り返りながら
ようやく、今日はじめての気持ちで
ただいま帰りました。
麗の大変だった一日はここまで。
明日はまた、変わりなく自分を律して過ごす
何事もない日が待っているわ。