『寂しいと』
すっきりしない天気が続いて
いつも頭の上には泣き出しそうな重く鈍い色の雲。
薄く晴れ間が差したかと思うと
冷たいしずくが頬に触れる。
からりとした晴天も見せてくれる元気な子なのにな。
このごろごきげんななめ?
日課のトレーニングは
屋内が中心。
思い立って遠くまで足を伸ばしてという感じではなくなってしまうから
これではどうも調子が出なくて
あんまり悩ましいとは気がついていなかったんだけど
楽しみが家の中にしかないというか
うっかりしていると食べてばかりになるというか
おいしいものがあるからいけないというか……
収穫の秋が来て
厳しい季節にもいっぱい葉を広げていた大きな自然がついに
この時を迎えたんだな、
何を食べてもおいしい日々がまたやってきたんだな。
そんなことを話しながら食べていたのが
どうやらレンジでチンするだけの餃子だったんだそうだ。
最近の冷凍食品技術の発達はあなどれないな。
今はぶどうがおいしくなってうれしいなと思っていたら
考えてみると、思い出す夏の日も桃や梨の食卓に及ぼす存在感はなかなかのものがあった。
すいかやメロンなんて主役だもんな。
いるだけで空気が変わるスターだ。
そりゃまあ、スターに会ったことはないからたぶんそうだろうって話だけど。
毎日の生活で一緒に過ごすメニューは
確かに最近になって休息に充実してきた感じがあるにはある。
けど
私にはあんまり関係なかったのかもしれない……
季節感っていうのはむずかしいね。
雨が降るといつもこんな感じだったっけ。
まわりに相談してみると
だいたいいつもそうだった
元気でかわいいヒカルという声と
たまにおとなしくしているように見えるときはあったけど
放っておくと何を始めるかわからない
一瞬も目を離せない手がかかるのがヒカルみたいな意見もあって
みんなに聞いても何がなんだかわからない。
長く続く雨が理由でも
気がつくと二人分くらいはすぐ入っていく。
何があったのか?
二人分と聞いた春風が
まさか!
ヒカルちゃんまさか!
かつてないうろたえ方だ。
私もまさかと思っていたけど
高校生活の一年目もそろそろ馴染んだ毎日で落ち着いてきた今
この年になっても人間に成長期がやって来て
ぐんと背が伸びる時期にさしかかるとは。
一日ごとに目に見える景色がどんどん変わっていったあの頃みたいに
やがて年を重ねて、ぐんぐん成長する小さな子供たちを見て
まるで自分たちとは違う時間を送っているみたいで
これからどんどん追い抜かれていくだけなのかもしれないと思うなんてこと
考えもしていなかったときみたいに
もしかしたら毎日夢中になって
おなかがすいてどんどん育つんだな。
なるほど、長く生きていれば
まさかと思うことってたくさんあるんだろうな。
うーん
それでも
やっぱり……
あんまり食べるものがおいしいせいで
洗い物も増えて困るかな……
ちょっとたいへん。
思いがけず肌寒い日が続くと
暖かいものもいいと思うんだ。
楽しみがいっぱいあるのは何も問題ないことだし
複雑な気持ちになるのはおかしいな。