綿雪

『ゆらゆら』
おすもう、はじまる!
ユキたちの一週間の開始よりも少し早く
昨日から土俵での戦いがはじまっています。
ちからくらべと
わざくらべ。
この日のために練習して培った力を
山のように大きな体に乗せてぶつける!
そろそろサッカーのシーズンが終わりになるみたいで
ヒカルお姉ちゃんは今のお楽しみはお相撲なのだそう。
十五日間、力士の皆さんにも観客の皆さんにも生まれるドラマ。
はじまるまではあんまり激しくなくて
すぐにどきどきしてしまうユキには合っている?
塩をまいたりしているところを
ゆっくりみつめます。
お茶を飲んだり
おかしもテーブルの上に少し並んでいる。
興奮しすぎて、テレビのこちら側で小柄な小兵たち同士
はじまってしまう取り組みも
だめよ、おかしが転がっちゃうよ!
ひとことで収まるの。
吹雪ちゃんはこれもホタお姉ちゃんの知的な策略だって言うんだけど
ユキはたぶん、たまたまなんじゃないかなって。
やさしいホタお姉ちゃんの思いやりです。
おすもうのときも
わあすごい、って
びっくりしたようなお顔もにこにこしているんだもの。
あたたかな笑顔。
隣に座ってみたら
心持ち体を預けてみて
つい甘えてしまいたくなるお姉ちゃんなの。
元気な子も、普段は激しい運動が得意なほうではない子も
みんなで並んで応援しているお相撲です。
激しいぶつかり合いも
時間をかけて体を作って、練習してきたんだから
すぐには真似ができないよ。
試してみようとしたって
ボールを持ってきてお姉ちゃんたちとペアを組んだりチームになったり
慣れないラケットの持ち方から教えてもらったりするわけでもなく
相手と体一つで
他に道具も
細かいルールも何もいらないつもりで
子供たちは遊んでみるけど。
しこをふんで
すりあしで向かっていくのも
なかなか難しい。
安定するには下半身の力が必要なの。
投げられて転んだら痛いし
ちょっと動き回っても大丈夫なくらいの広いところでないと危ないですもんね。
すぐに挑戦してみる子たちを
ユキはハラハラしながら見守るほうです。
小雨ちゃんと手をつないで
どうしようーって、ぎゅーっ!
ホタお姉ちゃんがいてくれたら
しがみついておねがい。
ぎゅーっ!
むがむちゅうだから
意外と力が出て
ユキちゃんも好取り組みを期待できそうだなんて
からかわれて言われるけれど
そうかな?
またお外に出たとき、
広い場所で誰かが挑戦者を待ってぶつかり稽古をしていたら
向かってみたら
そしたら……
考えていると、すぐに投げられて
土がついてしまうユキしか思い浮かばないんだけどな?
だってみんな立派な体格の人は
毎日たくさん食べて、体を動かしているのでしょう?
鍛えられているから。
地力があるから。
それがおすもうさんの強さ!
ユキが立ち向かってもむりです……
あんまりしっかりしていないで
すぐ揺れてしまうから。
腰を落としてふんばってみたら
そのままぺしゃんって
かけっこの準備で姿勢をとるだけで。
今までは、無理をしないのが一番大事なお仕事のユキだから
仕方のないことだけど
うえーん、ちょっとはずかしいです。
だけど、それでも
がんばり屋に囲まれて
おうちのみんなが盛り上がっていたら
少し体を気にする子にはいけないことでも
ユキは、あの……
氷柱お姉ちゃんに内緒で土俵にあがって
どすこーい
かかってこい
ユキのぜき!
みたいなことをしていたら
やっぱりお兄ちゃんもはらはらしちゃって止めるよね?
たまに元気すぎて心配をかけてしまう子になりたい
小さないたずらっ子のユキかもしれないです。