綿雪

『夜の贈り物』
寒い季節がやってくると
ほんの少し星がよく見えるようになって
きらきら輝くのがわかるのだと言います。
ユキが知っている冬の夜空っていうのは
カーテンを少しよけてみた細いすきまのこと。
それだって体の弱い子には本当はいけないの。
だから、本物はわからないから
テレビの番組で見るのだとか
図鑑で見るのや、写真で見るのとか。
みんなで花火をした夏の夜と
そこまで違うものなのかな?
と不思議に思いながら調べます。
学校の部活動で帰りが遅いヒカルお姉ちゃんや
星が好きな霙お姉ちゃんは
だんだん変わっていく季節の夜空に詳しい。
ヒカルお姉ちゃんは、気がついたらいつのまにか
星がたくさん降ってくるみたいにあまりにきれいになっていて
息をするのも忘れておどろいた!
大げさに面白く伝えてくれます。
霙お姉ちゃんはこんな感じだなって
ユキの差し出すお絵描き帳にさらさらと
紺色と白を重ねていくの。
そうするとユキの手元にもカシオペア座の形がわかって
図鑑で見たけど本当に今この頭の上にあるんだ──
これは本当に見たことのない夜空だ、
ユキが知らない星の夜だとドキドキするんです。
前にみんなで見上げたのと比べると
一緒にいてくれるお兄ちゃんとお姉ちゃんたちの顔はそこにないけれど
星の数はぜんぜん違う。
ぴかぴかの大きな星が霙お姉ちゃんの手元から生まれて
ユキが一つ一つ指差していく。
これはユキがめったに見たことのない大きな形の星。
こっちにも。
あそこにも、まだまだある。
いっぱいなの。
今、おうちの中で過ごす夜も
すぐ真上で数え切れない光が瞬いている。
その眺めを見たとき
本当に言葉も忘れて立ち尽くすのかと──
そんなお話をするのが楽しい冬です。
冷たくて、こごえても
こんなに星があれば
おもちゃの取り合いでおすもうをして決着をつける
マリーちゃんと観月ちゃんも
仲良く分けて、欲しいだけもらってもまだまだあるくらいじゃないでしょうか?
だから、みんなといる夜があるから──
楽しいお話を聞けて、知りたいことがもっと増えて
寒くても、暗くても、なんにも怖くない。
もう、おやすみを伝えたあとになって
一人の部屋で眠る時間を迎えるのはちっとも悲しいことではないの。