曜視点だけど、メインではないです……サンシャインSS。だと思います……

あれから繰り返しミュースタのPVを何度か見て、感想なども、主に笑顔無双というあたりを中心にして語りたいと思ったのですけど、確実に長くなるので……とりあえず、この感情は恋だと思うんです。9人。
次のPVはいつでしたっけ。あ、映画じゃん! あと一ヶ月! って、家に持ち帰れないじゃん! 同じ映画を何度も見に行くなんてハハハそんなまさか……まさか……今は行けるかどうかもわからない時期ですけどね……7月末まで上映ってするでしょうか?

『マリーちゃん包囲網(しかし鞠莉メインのSSではない)』
「うーん、この角度なら私だってちゃーんとキュート……いけてそう!」
トイレの入り口で、鏡を見ながら熱心に研究をしているみたい。
「マリーちゃん、いま帰り?」
「ち、違うの! そうじゃないの! 何かの間違いなの! ミステイク! 本当のトゥルー私はそんなこと考えたりなんてしないんだからー!」
別に何も言ってないのに、走って逃げて行っちゃった。トゥルーって使い方アレでいいの?
どれどれ、同じ鏡で私も研究研究。あっ、寝癖が元気に跳ねています! 朝からこんなだったなんてたいへん! でも、これも元気のバロメーターだよね。よしよし。なおしなおし。
マリーちゃんの様子だと、今見たことを誰にも秘密にして欲しいみたいに見えたな。これは私の胸の中だけにとどめておかないと。
「あら曜さん、鏡を見て熱心ですね」
「あっ、聞いて! さっきマリーちゃんが!」
あれ? 何か隠しておくことがあったような気もしたけど……でもまあ、私が隠し事なんて、そんな難しいことなんてできるわけないよね!
「そうですか。マリーさんも気にしてくれているのですね」
「曜ちゃん! それって本当!?」
ダイヤちゃんの後ろで話を聞いていた千歌ちゃんが飛び出す。
「千歌さんにストーキングされてぶつぶつ独り言を聞かされっぱなしだったのです」
「違うよ! ラブライブがどれだけ素晴らしいか教えてあげていたの!」
「おかげで今後の人生にまったく関係のない余計なことばかり詳しくなったような気がします」
「だいじなことです!」
「ともかく、マリーさんにもアイドル活動に参加してもらえれば心強いのは間違いありません。必ず頼もしい味方になります。私たちは本気でラブライブの優勝を目指していくのですから!」
「うん! ではラブライブに向かって船出します! 発進!!」
「敬礼!!!」
すぐ背中できっと千歌ちゃんが同じ方向に向かって敬礼していると信じて、ポーズを決める。ダイヤちゃんの反応が何かすごいものを見たって顔だから、うまくいったと思います! なんでそれでぐったりしたような表情になるの?
「あっ、ちょっと待って! 曜ちゃんずるいよ! 私が先頭に立って船出したい!」
「じゃあやりなおそうか」
「うん! 船出します! 発進!!」
「敬礼!!!」
なんでぐったりしているの?
「では、マリーさんを追いかけて少し話をしてみます」
「ダイヤちゃん、発進!」
「それはもういいです」
ダイヤちゃんが冷静にたしなめて、またあとでって分かれる。このあと放課後もまた練習です。
「そういえば、果南ちゃんも今日はマリーちゃんを追いかけて話してみるって言ってたよ」
「そんなにしつこくされて、マリーちゃんはかえって警戒しないかなあ。なんでさっきダイヤちゃんにその話をしてあげなかったの?」
「それは忘れていたからだよ」
「じゃあしょうがないね」
難しいことができない二人でした。
みんながいる部室に向かうと、廊下まで聞こえる賑やかな話し声。
今日も明るい船出になりそう!
元気に扉を開けると、そこにはまるで、かつて地球という星ができて青い空と海が広がってから、この場所には一度も光がさしたことがないような暗い雰囲気の中、頭を抱える二人の女の子が。
なんとなく忍び足になって、近くで話している善子ちゃんと花丸ちゃんに聞いてみる。
「梨子ちゃんとルビィちゃんはどうしたの?」
なんとなく小声の話し合い。
「あのねえ、梨子ちゃんはダンスの練習がうまく行かなくて足を引っ張ってるんじゃないか、なーんて落ち込んでるんだって。そんなの悩むことじゃないのにねえ。もっと考えなしの行動ばかりして、メンバーの足を引っ張ってる人もいるのに」
「大変だ! リーダーとして、その人も励ましてあげないと!」
「あなたのことよ」
「ファイトだよ!」
励ましているみたい。
「じゃあ、ルビィちゃんもダンスのことで?」
「それが……」
花丸ちゃんが話しにくそうに、ぽつぽつと。
「お弁当のにんじんが苦手で残したら、ダイヤちゃんに見つかって怒られたずら。食べるまで許してもらえないんだって」
「そうなんだ? にんじんと仲間になれそうな色でいいと思うのに」
「曜ちゃんの生き物の見方は斬新だなあ」
花丸ちゃんに褒めてもらえたよ。
「これは二人を元気付けてあげたいところだね」
「オラもそう思ったんだ。それでヨハネちゃんに相談したんだけど」
「それがひどいのよ! 仏様の教えを聞いてもらえばいいなんて言うのよ!? この世に神も仏もあるわけないじゃない!」
それは善子ちゃんの意見のほうがよくわからなくなっているね。
「いる!」
「いない! いたら目の前に連れてきて、見せてくれたらいいんじゃない? そしたら私だって頭を下げて降参してあげてもいいけど」
楽しそうな声の正体は、この善子ちゃんの高笑いだったんだね。
「悪魔の私が、そんなものいないことを証明して、まさしくこれが悪魔の証明……ごめんやっぱり今のなし」
「えっ何? 聞いてなかった」
千歌ちゃんが反応する。
「聞いてなかったならいいのよ」
「ええー!? 何!? 気になるよ! 言ってよ! 仲間に隠し事なんていけないよ! なんでも話してよ!」
「た、助けて!」
「だいたいヨハネちゃんだって嫌いな食べ物があるんだから、ルビィちゃんの気持ちわかってあげてもいいずら」
「ふーん、みかんなんて悪魔の力でぺろって食べてやるんだから。だいたい今ここにないから、食べるところ見せてあげられないわ。せっかくヨハネパワー見せてあげるチャンスだったのにぃ☆ あーん、アンラッキー☆」
すると千歌ちゃんが
「あっ、みかんならあるよ! 食べられるところ見せて!」
「げっまじついてない」
いきなり日本語になったね。
ヨハネちゃん! 悪魔の力でみかんでも何でも食べられるようになるってところ、ルビィちゃんに見せてあげて!」
「ええ、もう仕方ないからなんでも任せなさいよ」
「呪文とか使うの?」
「そうよ呪文よ。これ、もうどうすればいいのよ。私アドリブに強いほうじゃないのよ」
「あっくまっくまー」
「!?」
「ポーズはこう」
「わ、わかったわ! ルビィちゃん、食べられないものがあるなんて気にすることない! ほら、この呪文で、あっくまっくまー! みかんでもなんでも、あーおいし、おいしいなー、ぶはっ! 無理に決まってるでしょ! そもそも何なのよ! あっくまっくまーって! いくらなんでもアドリブに強いほうじゃないにも限度があるわよ! 突飛な発想だけは際立ってるっていう果南ちゃんの話はなんだったの!? あの人は身内に甘いお姉ちゃんなの!? あっくまっくまーって! 何を言わせるのよ!」
「にっこにっこにーの」
「そのへんはだいたいわかるわよ!」
「みかん、食べられなかったね」
「そりゃ無理よ」
「悪魔の力で梨子ちゃんも励ませる?」
「えっ! それはもちろん悪魔の力だから……よゆう?」
「あの、私のことは気にしないでいいから」
怖がるルビィちゃんをそっと優しく抱いてあげながら、梨子ちゃんも身の危険を感じはじめたみたいだよ。
「こんなに一生懸命励ましてくれる仲間がいるの。落ち込んでばかりいられないです」
本当に励ましていたかどうかはよくわからないけど、一生懸命だったのは間違いないよね!
「しっ。みんな、何か聞こえない?」
遠くから近づく声……私でも聞こえなかったんだけど、こんな小さな声に気づく花丸ちゃんは何者なの?
「マリーさんにも大事なものがあるでしょうけれど……」
この位置に部室が近づいているって気がつかないみたいで、ダイヤちゃんの説得が続く。
「私も、誰よりも大事な妹を守るため、アイドル活動をすると決めたのです」
「お姉ちゃん……」
「私の妹はもちろん世界一かわいいので当然アイドルを目指せば成功するに決まっているのですから、私が近くにいて守ってあげたいと」
「お、お姉ちゃん?」
「誰よりもかわいいルビィが私たちのグループのセンターに立ち、私はいちばん近くでその初々しい輝きを見つめる世界一の果報者になって、そして二人の強い愛の力を中心にしてついでに仲間たちの力で私たちのグループはラブライブを勝ち抜いていけると信じて」
部屋にいる全員の注目を受けて、ついに耐えきれなくなったルビィちゃんが花丸ちゃんの腕の中に体を預けて、
「ねえ花丸ちゃん、私はもうだめみたい……この世に愛されすぎて愛され死するなんてことがあるのかな……」
「そうだなあ、オラの寺は内浦の葬式ならほとんど引き受けているけど、だいたい週に10人くらいは愛され死で召される魂があるんだ」
内浦の人は愛されすぎです!
それで花丸ちゃんはどうしてルビィちゃんの頭の少し上あたりを見て話をしているの? どうして手を振るの? よくわからないけどそれはまずいような気がするの! 千歌ちゃんはその横で不思議そうに角度を変えて眺めても、よくわからないけど何も見えないと思うよ!
「ダイヤちゃんを止めたほうがいいのかなあ?」
千歌ちゃんと梨子ちゃんが相談を始めて、梨子ちゃんはいつになくまじめな顔。
「ううん、チカちゃん、これはマリーちゃんを説得する真剣な話だと思うの。ダイヤちゃんの本当の気持ち、全部ここで伝えさせてあげようよ」
「真剣な本当の気持ちだから問題があるような気がするのはなんでだろう?」
「あっ、チカ!」
唐突に部室の扉が開いて響き渡った大声に、窓の外の話がぴたりと止まる。
「マリーちゃんのこと探していたんだけど見つからなくて! そろそろ練習が始まる時間だから戻ってきちゃった! みんなどうしたの?」
難しいことができない人がもう一人いて頼もしいです!
窓に映ったダイヤちゃんの深刻な顔が、中の様子を覗き込んで、ゆっくりと窓ガラスを開けると。
「みんな、もう練習が始まる時間よ。今日もしっかりね」
何事もなかったことにするって決めたみたい。
「私はもう限界だから……練習に参加することはできないけど……みんなにだったら任せられるわ……ルビィのこと、お願いします」
あっ、花丸ちゃんの腕の中に!
「ねえ花丸さん、この世界に、誰かを愛しすぎて愛し死するなんてことあるのかしら」
「そうだなあ、うちの寺ではだいたい週に三十人くらい愛し死があるなあ」
内浦の人はちょっと愛しすぎです!