立夏

『ヘンシン』
ある朝
目が覚めると
なっていたのは
制服モード。
小雨ちゃんも麗ちゃんも
びっくりしてる。
それで寝たの!?
まさかー。
小雨ちゃんと麗ちゃんが
朝ごはんに行って帰ってくるまでに
着てみたくなった!
そういうこと!
この春からは
おとなです。
オニーチャンの指を
しゃぶったりしない!
おさとうがついて甘そうでも
いやしくて
はしたないから。
オニーチャンが好きでも
もう中学生だから……
こんどは指より
くちびるをうばわなければ!
でも、気をつけて
リッカちゃん。
もしも、制服を着て家を走り回ったら
届いたばかりなのに
いたんでしまう。
はしゃぎすぎてしまう。
ジャージじゃないんだよ。
運動には向かない。
入学式に並んだら
まわりとくらべて
フレッシュな一年生の中で
ひとりだけ
明らかに、制服がくたびれている。
そんなことになったら
気がはやるリカのフライングのせい。
晴れがましい新たな学校生活のはじまり。
しゅーんとしてうつむいたまま迎えたくないから
とりあえず、袖を通してみただけで
がまんです。
これ以上は……
おあずけ!
くぅーん
きゅうーん
ないてもだめ。
だいじょうぶ。
もうすぐだもん。
それにこの春
ファッションショーしまくったもん。
いもーとたちにゆずるおさがり
かわいくしてあげよう。
おねーちゃんたちにもらう
サイズが合わないあれこれ
はいるの?
だって。
ぎりぎりだったよ!
よかった!
少し苦しいところは
ホタおねーちゃんが直してくれるし。
だからいいの。
今すぐ変わらなくても。
この春、リカは
いままでよりずっと
かわいくなり
はなやかに
変わりつづけて
さなぎは、ちょうちょになるよ!
そだつよ!
ぱおーん!
ぞうのまね。
さすがにそこまでは
大きくならないけどね!
いや、がんばればあるいは?
だから、今日のリカはおねーちゃん。
小さい子たちが新学期の準備に
みてみて
てつだってーって
オニーチャンをひっぱって
連れて行かれちゃっても
もう中学生だもん。
こころによゆうがある。
あっちこっちにひっぱりだこの
まじめなカレシ。
おつかれで帰ってきたら
大人のいやしの
マッサージしてあげよー!
とか。
制服着るの
がまんして新学期を待ってるよー!
リカえらい?
なーんて報告とか。
聞きたいでしょ?
帰って来るでしょ?
むしろリカから離れられないでしょ?
すぐに戻ってくるって
言ってたじゃーん!
いったい連れて行かれたあと
どこでどうなったのか
あーちゃんがオニーチャンをつかまえて
指をしゃぶっていたから
だめー!
リカまってたのにー!
うばいあい。
あーちゃんに怒られちゃった。
うーば!
あーば!
むむむむ……
べろべろばー!
しょうぶはひきわけ。
決着は明日にしようね!
あーちゃんを抱っこして、おやつにしよー!
重くなったね!
これはリカが追い抜かれる日もすぐだ……
たぶん、あさってくらいかな?
これは急いで
オニーチャンに心を決めてもらわなきゃ。
始業式の日が来たら
リカは今までよりもずっと大人に変わります。
手をつないで、誓い合って
はじまりの日を一緒に踏み出して行けるように
いってきますの声も落ち着いて
その日の一歩を楽しみにしていたいから。
中学生になったお祝いがほしいの。
けっこんしよ!
ちゃんと制服の姿を見たら
リカをもらったこと
オニーチャンは後悔しないはず。
早く素直な気持ちを伝えないと
リカすねちゃって
こっちから王子様をさらっていくかもしれないよ!
うでがなるね!
よーし、やるぞ!
あともうほんのちょっとになった春休み。
もうちょっと楽しい思いでほしー
いっぱいほしーなー。
リカに一番の思い出をくれるのは
いつだってたった一人と決まっているから。
短い春休み
今できることを全部して
後悔しないようにしよう!
これ大事!
リカはいつでも待ってるよ。
待ちきれなかったらどんどんおそいかかるからねー!
楽しみにしててネ。