さくら

『いっとうしょう』
かけっこいちばん
あしがはやいのは
ゆうなちゃん!
いっとうしょうの
メダルをあげる。
かくれんぼいちばん
かくれじょうずは
にじこちゃん!
いっとうしょう!
メダルわんさか
もらえるの。
おどりがじょうずで
なんだが
げいじゅつてき!
いっとうしょうは
こさめちゃん!
だれもみたことのない
せかいがはじまる。
メダルをくびにかけて!
カレンダーのうらでつくって
ダンボールをもらってつくって
いろをぬって
つくってもつくっても
スポーツのあきや
どくしょのあきや
げいじゅつのあきには
あげたくなるばっかり。
たりないたりない
きんメダル。
お兄ちゃんはメダルなんこ
もっているかな?
ひゃくまんこ?
こんどみせてね。
さくらのメダルは
すききらいなく
よくたべましたメダル。
しってる?
おいしいものをたべるあきもあるの。
おさかなもおいしいから
さんまにはまちに
さけをたべる。
よくほねをとる
いっとうしょうは
さかなをみたらしんけん!
みぞれちゃん。
おとななの。
でも、みはるおねえちゃんは
ほねをとるのがへた……
ぐちゃぐちゃ。
しまった!
かんがえごとをしていた!
だって。
さくら、おのこししないように
おさかなもほねをとるの。
ほねをとれ!
さくら!
えいよういっぱい
おさかなをたべたなら
きょうのメダルおうは
きまり。
もぐもぐもぐ……
おやつのりんごをよくたべたら
あとでおどりのれんしゅうもしようね。

小雨

『本気マジック』
茜色の落ち葉が積もり
進むだけでもためらう道を
勇敢な子供たちはお姉ちゃんたちから受け取ったほうきで
汗をかきながら掃除してゆく。
その先に追い求める宝があると信じて。
でも、こんなにがんばって
追いかけた冒険の全てが
みんなにとって本当の宝物なんじゃないでしょうか?
なんちゃって。
やがて地図が指し示す
物置にたどり着き
勇気を出して手に取ったはたきを使って蜘蛛の巣を払った後の
押し入れには、
なんと!
求め続けた素晴らしいものが
実際にそこにあったのです。
ところでお兄ちゃんは
つい最近のハロウィンの時も
おばけのふりをして怖がらせる練習や
素敵な歌に合わせたダンス、
うまくいきましたか?
墓場からよみがえるものたちに囲まれて
怖くてゆかいな動きをそろえる映像を参考にしたり、
小雨のぎこちない踊りではみんな呆然と見つめるばかりでしたけど
楽しもうとする気持ちが通じあうような
わいわい騒がしい声が続く
お楽しみの夜を過ごしました。
そして、フットワークも頼もしいのは
面白いことを探すのが得意な家族のみんな。
見つけ出したのは
去年しまったそのままのクリスマス支度で、
あんなに踊った夜からそんなに経ってもいないのに
ぜんぜん遊び足りないみたいに
激しいダンスを練習しています。
おまけにクリスマスソングは
明るくてテンポが速くて
みんなの足も止まらないよう。
お兄ちゃん、のんびり屋の小雨が
軽快なステップに置いて行かれずにいることを
必ずよい子のもとに訪れる聖夜の奇跡の
ついででいいので
願っていてください!

虹子

『おたから』
みつけた!
よるにまぎれて
わるいことをする
わるいもの。
そのなは
かいぞく!
ななつの
うみをわたり
きんぎんざいほうを
うばいとり
どこかにかくす。
かくしたら
ちずをかく。
どくろのしるしがあるちずは
かいぞくがかくしたおたからのしるし。
きょう、ハロウィンのおしゃれを
みんなでかたづけていたら
なんと
ホタおねえちゃんが
かいぞくのかっこうをしていたの!
そんな……
まじょだと
おもっていたのに!
かわいいまじょにうまくばけた
ホタおねえちゃん。
かんねんして
どくろのしるしがある
おたからのちずをくれるよ。
なぞをときあかせば
どうくつのおくに
きんかいがやまになってつまれている。
てんじょうから
きらきらしたほうせきがふってくる。
たからばこからはみでる
げいじゅつひん。
せかいでいちばんの
えがならんで
そのなかにかいぞくのにがおえが
まんなかにどどんとある。
でも、にじこのてのなかの
おたからのちずがしめすさきは
おひげのかいぞくのおかおじゃなくて
かわいいほたるちゃんせんちょうがいて、
おたからのどまんなかでまっているの。
にじこ、
ちずのなぞをとけたよ!
たぬきのえのなぞを
ひらめいたからね!
たぬきのよこに
た!
ぬき!
って
おおきなた、のじがあったのが
ヒントだよ。
おにいちゃん、わかった?
みんなでわいわいさがしにむかったさきは
おちばがつもったうらにわ。
あした、おおそうじをしたら
ほたるせんちょうのにがおえや
おたからがでてくるかもしれないんだって。
にじこ、きいたことある!
せんちょうのおたからは
かわいいおはな。
にじこ、おおきくなったら
ななつのうみをわたるせんちょうになって
おたからをかくすよ。
おにいちゃんは、おおきくなったら
にじこのおにいちゃんになるよ。
にじこせんちょうのひみつは
しったものをいきてかえしてはいけないおきて。
だいすきなひとにはつたえたいひみつ。
おたからをかくしたら
そのときは
おにいちゃんにだけ、おしえてあげる。

氷柱

『いたずら』
あーっ!
また!
ちょっと目を離した隙に
いたずらされてる!
困るのよね。
いくら日記の当番が来て
わざわざ下僕宛てに書く内容が
そんなにないと言っても
ご主人の欲しいものくらい
おつかいしてきなさい!
とか
日ごろから忙しいのはわかっているんだから
暇を見て肩を揉むくらいしなさい!
とか
勉強は復習が大事だから
中学生の時の内容がちゃんと頭に入っているか
見てあげるから感謝しなさい!
みたいなことは
わざわざ言わないとわからない察しの悪い下僕だし
日記も必要になるときはないではないのよね。
それなのにページを使ってしまうと
だめだって言っても
毎日伝えたいことがいっぱいで
日記のすみっこを利用されているの。
まったく!
なになに?
連休だから
遊んでください!
なるほどなるほど。
下僕も忙しいのよ!
私の相手もしないといけないんだし!
それから次は、と。
ハロウィン楽しかったね!
またしようね!
だって。
そうね、来年ね。
あとは、ええと。
寒くなってきたから
晩御飯に食べたいものを
教えてください!
ふーん。
下僕のことだから
きっとハンバーグとかからあげとかに決まっているわね。
男の子だもの。
ちゃんと私から伝えておいてあげるわ。
で、それからそれから?
一緒に家のお手伝いをしよう!
まずは悪い鬼退治に行こうね、ですって。
お手伝いを何か勘違いしているみたいね。
まあ、家族の役に立ちたいのは感心ね。
私が後で褒めておくわ。
わかっていたことだけど
どれ一つとして緊急の用件でもないのに
そんなに聞いてもらいたいものなのかしら!
順番を守ってもらわないとね。
というわけで
今日の日記の当番は私よ。
気を聞かせて何をすべきか
ちゃんとわかっているでしょうね?
全部は言わないわよ。

綿雪

『ぽかぽかあったか』
今日も暖かな日になりました。
日なたにいると夜になって襲ってくる寒さが
まるで全部嘘のように
どこまでも包んでくれて
体中に冷たいところも怖い気持ちも
なにも残らずなくなってしまいます。
ユキにはとてもできないことで
日差しの下にいれば
世界中から暗い夜がずっとなくなってしまうとしても
信じられそうなほど。
幸せで大事な時間をくれると思います。
きのうは10月最後の日で
これから寒くなっていく前の
ハロウィンの日。
オレンジ色の明かりと
秋の実りを囲んで
お兄ちゃんたちと一緒に過ごしたの。
小食のユキは
テーブルに並んだお皿の半分も
手を付けることができなくて残念だったけれど
それでもきっと
今年の一番楽しい日のひとつ。
ここにいられてよかったな、
今日、元気でいられてよかったなと
思った時間のひとつでした。
お兄ちゃん、これからは
どんどん冬が近づいて
寒くなっていくのでしょう?
年末年始も楽しい出来事が
たくさん増えて
おうちに急いで帰ってくる
みんなといられる時間もいっぱいで、
ホタお姉ちゃんも春風お姉ちゃんも
おいしいものをたくさん作ってみたいんだって。
そうしたらまたユキはきっと
うれしくなってしまいますね。
でも、凍える風が吹く夕暮れを
毎日過ごすようになると
やっぱり冬はちょっぴり怖い。
帰りの時間を知らせるチャイムと
すぐに山の向こうに沈んでしまうきれいな夕焼け。
夜はまた長くて寒くなっていきます。
体を大事にすることに一生懸命で
他に何もできることのないユキはどうなってしまうのだろう!
明るい日差しを持ち運んでいけたらいいのに。
こうしていつも温めてもらえるなら一番いいのにね。
お兄ちゃん、ユキは夜が更けて暗くなったら
お兄ちゃんに真っ先に頼ることしかできません。
どうか寒くなっても体の調子を悪くしないで
いつもユキのそばで楽しそうにしているお兄ちゃんでいてください。
それが、お兄ちゃんに守ってもらえないとさみしいユキの
この冬最初のわがままです!

星花

『魔女っ子の願い事』
トリックオアトリート!
縁の広い三角帽子を両手で支えて
今にも飛び立てそうな気分の魔女が
降り立った部屋は、
窓枠を横断するキャラクターガーランドと
ハロウィンカラーのペーパーファンに封鎖され
甘いかぼちゃのにおいがするテーブルを囲む
物騒な生き物たちの
歌いだしそうな陽気さに満ちている。
今日は年に一度のハロウィンです。
ほんの少しの夜更かし、
食べきれないくらい山盛りになった取り皿が
見た目と比べたらちっとも罪にならないような
はしゃぎ声のする夕食時。
蛍お姉ちゃんが子供たちのために用意した立派な仮装に身を包み
ヒカルお姉ちゃんや氷柱お姉ちゃんががんばって飾りつけをしてくれたのは
みんながよろこぶ楽しい眺め。
星花たちだって準備を手伝ったつもりだったけど
やっぱりお姉ちゃんたちは違うの!
チョコレートとマロンクリームの落ち着いた色合いに
クランベリーソースとラズベリーのアクセントがどこか神秘的で
それにパーティーに欠かせないピザのトマトソースに
カレー粉のスパイシーな香りもどこかのお皿から感じて
大変な手間で魔法をかけたのは
たった一夜の夢。
おうちでとんでもないお祭りが開けるなんて
お姉ちゃんたちはすごいなあ、
お兄ちゃんだってこんなお姉ちゃんがいたら頼もしいに違いない、
星花のずっと追いかける目標です。
と感激していたら
だいたい本やネットで調べた通りでそんなに工夫はしていないんだって。
もっと特別なおうちハロウィンがよかったかなって
蛍お姉ちゃんは聞いてくるけど
ちょっとほっぺたを染めた楽しそうな横顔が
目の前の素敵なハロウィンを歓迎していると
わかってしまうんだから!
わがやのきょうだいの力だけではなかったようだけど
世界中の
ハロウィンを過ごす人たちと
楽しみたいお祭り好きの気持ちで
この街のきょうだいがたくさんの仲のいい家の
とってもにぎやかに
期待して集まった部屋では
楽しい時間が続いています。
たとえすぐに終わる夢でも
こんな時間を今日だけは
世界中の人が過ごせますように。
魔女の祈りをするごっこです。
つたなく振るうリボン付きタクトの動きで
小さな願いは
叶うかな?
そして、まだもう少しみんなといられて
今日が終わらないでいてくれますように。
ハッピーハロウィン!