氷柱

『お正月の思い出』
あけましておめでとう。
そう、こういう時候のあいさつは
きっちりしないとね。
今年もよろしく──とか
ありきたりで芸がないけど
新年はそういうものだから
下僕にもあいさつはしておいてあげる。
ところで──
春風姉様はすごいわね。
なんだか必ず初夢にあらわれて
どんなことがあっても
これから今年一年をいい年にできる初夢に
できるんだ! と。
どこからかそんな話を聞きつけた子供たちに囲まれて
頼まれごとをして──
全部任せなさいって
みんなの夢に入っていったらしい──
一富士二鷹三茄子のどれにあたるのかしら?
春風姉様って。
夢の中でおいしいものが出てきたとも聞くから
そういう方向なのかしら?
それともあれは──
元日のおせちをみんなで並べて
きれいだから写真に撮っておきたいと
待たされたから──
おなかがすいていたとか?
だって、年末から子供たちもお手伝いして
みんなで作ったのを知っているんだもの。
なるべく記録に残しておきたいし
冬休み明けに友達に見せたら驚いてもらえるかもしれないし──
ちょっとはりきっただけのことよ!
まあ、そのおかげで
今年ももりもりたくさん食べて
大きくなる夢を見る子がいっぱいいたと思えば
それでいいのよ。
まあ、そんなこんな
お正月から福笑いやらすごろくやら姉妹合わせやら忙しかったけど
疲れ切って夢を見なかったということもないだろうし。
当然、下僕も
初夢の中では縁起のいいことがあったりしたんじゃないの。
興味なんて
全然ないけど
話したいなら勝手に話してみてもいいけど!
春風姉様は夢の中に行くって約束をして
私は──夢の話なんてどうでもいいとしか思っていなかったから
そういえば事前には特に打合せなんてしていなかったわ。
これは──私の下僕としての心構えが試される時が来たようね。
今年一年を占う──まさにそんな夢の話を聞かせてもらいたいわ!
ううん、いや、ぜんぜん興味ないわ!