観月

『宿命』
望むと望まざるに関わらず、
人は生まれながらに
何かの役目を求められることもある──
と、よく聞くことがあるな。
もしそれが本当なら
わらわも人に見えないものを知り
仲良くなり
時にはしつけたりを、
役目とするのかもしれぬ──
やつらはたまに
からかって人をだましたりと
人間臭い真似をすることがある。
だまされないように知恵を磨くのも
きっと、わらわの宿命なのじゃ。
今日は、誰かに面白いいたずらをして
楽しむ人が現れる日だという。
気をつけないと!
人間にからかわれるならまだいいほうで、
こっそり人の物真似をした存在が
忍び込んでいたりしたら──
そう考えると、
誰にも騙されるわけにはいかぬのじゃ!
さいわい、みんなと話した様子では
霙姉じゃが自分のことを──
生まれてこのかた一度も嘘をついたことがないし
嘘のつき方もわからないな!
と、胸を張っていたので
そのそばにいればだまされることもなく安心して過ごせるであろう。
いつでもわがやの姉じゃは頼りになるの──
わらわも大きくなれば
嘘を見抜いてどんな真実でも見つけ出すようになるのじゃ。
大人になるのが楽しみじゃな。
でも──そういえば、おばあが言っていたことだが
人のどうにもならない宿命を、もしも覆すものがあるとしたら
それは最愛の人の──愛の力だけだという。
わらわが愛によって
普通の子供のように過ごせる日が
いつか来るのであろうか?
それとも、おばあがわらわをからかって嘘をついたこともありえる。
いやいや、そもそも考えてみれば
わらわが兄じゃに聞いてほしいこのおはなしにまで
嘘が混じっていたら──
おばあはそんな話はしなかったかもしれないし、
最初から──
兄じゃをからかう観月が
本当に観月であるかどうかさえも──
というわけで、あの子もこの子もはりきって
いろいろ大変な一日であったな。
兄じゃはだまされないで過ごせたかの?