ヒカル

『嵐のあと』
まるで終わることなく続いて
何もかも吹き飛ばし
地上の全てに雨をたたきつけ
私の大事な家族を怖がらせようとしていた
あの激しい嵐が
ついに通り過ぎて行ったようだ。
聞こえているのは
わずかな雨だれと
怖がり疲れたらしい子供たちの安心したような寝息。
窓が揺れて
闇の中で大きな風の音がするたびに
飛び上がっては
お兄ちゃんを探して大きな声で呼びかけるんだ。
何かあったら必ず見つけ出してくれて
駆け付けるに違いない
ヒーローを信じるみたいに。
きっと、今日の本当のヒーローは
被害が少しでも小さく収まるように
刻々変わる状況にも正確であろうと予報を続けた人たち、
情報を集めて安全につながる選択を伝え続けた人たち、
冷たい雨に打たれながら困難な仕事を成し遂げた人たち、
避難所の準備も事前の対策も忙しく駆け回った人はいっぱいいて
何より、大切な身の安全を確保しようと最善の行動をとる人たち。
そしてこれから
恐ろしい日を乗り越えて、
台風の影響を確かめ
いつもの生活に戻ろうとしているみんな。
まだ日本列島のどこかで戦い続けている人もいるけど
私たちの周りは一応静けさを取り戻して
穏やかな寝顔やほっとした表情を寄せ合って
家族の無事をしみじみとかみしめていられる状況を取り戻せたようだ。
天気図に白い雲を大きく広げた巨大な台風19号は
どうやらここには激しく厳しい長い手をしつこく伸ばさずに
背を向けていった。
明日になってどこか問題は出ていないか
状況を確認する仕事も私たち年長組には残っているけど
無事で耐えきれたみたいで
今はひとまず気持ちを落ち着けてもいいだろう、といったところかな。
南からとんでもない台風が近づくと
予報があったときから
自分でも意識しないうちに緊張を続けていたのか
なんだかどっと疲れがやってきて
気にしていなかった分の眠気が急にまとめて押し寄せてきたような感じも
少しあるかな……
大丈夫、横になるまでもない。
ちょっと肩を貸してくれたら
ほんの短い間だけ目を閉じていればいいんだから
そのあとで思いっきり
今日一番みんなのそばで頑張って
私たちを支えてくれた人を
ほめてあげなくっちゃ……
言いたいことはもう決めているんだ。
忘れないうちに……
伝えるよ……むにゃむにゃ。