綿雪

『決戦』
私たちが家族みんなで
無事に台風を乗り越えて
立派で仲良くいられたら
ごほうびがなくっちゃいけないと
海晴お姉ちゃんははりきって
お天気予報のお仕事に向かったの。
ママにもみんなのすごいところをちゃんと伝えて
どこにでも旅行に行けるのを許してもらえる
いいお知らせと
恐ろしい嵐にも負けなかった子供たちに
たくさんのお菓子とお土産を抱えて帰ってくると
言ってくれて、
だから必ず海晴お姉ちゃんがかっこよくがんばる
大切な天気予報を
見逃さないで見ておくこと。
みんなのためにたくさん情報を伝えるからね、
気合を入れてニッコリして
海晴お姉ちゃんは出かけていきました。
今度帰ってきてくれて
また向かい合って明るい顔で会えると約束したのは
日曜日の朝。
それまでユキたちは自分の身を守ることを第一に
待っていなくてはいけません。
さみしいけど
でもね。
本当はユキは普段からできることがなんにもなくて
いつも体が弱くて眠っているだけ。
悲しくて泣いてばかりでも
おかしくないのかもしれないと
自分でも思うのに
でも、海晴お姉ちゃんが明るくて優しいおかげで
つらくなくて
みんなとお話をしながら
大好きな海晴お姉ちゃんのお話ができるの。
早く帰ってきてほしいね、
私たちみんな海晴お姉ちゃんのことを待っているんだもの、
心配かけないように一生懸命待っていようねと
手をつないで気持ちを伝え合います。
早く、早く怖い台風が行ってしまって
ここに家族がそろうといいのに、
それが本当に楽しみなのにって
聞いてほしくて顔を寄せ合い
私たちは過ごすの。
遠くでお仕事をする海晴お姉ちゃんへ
ここには頼もしいお兄ちゃんがいるから何にも心配いりません、
だから海晴お姉ちゃんを待っている子たちと同じくらい元気ないつもの顔で
どうか無事に帰ってきてと伝えられたらいいのにね。
お兄ちゃんも、ユキと手をつないでいてくれますか?
いつかは過ぎ去る激しい雨と
風の音の中で
台風が通り過ぎるまでに話したいことが
たくさんあるの。