『マイペース』
今日もみんなは
ぱたぱた
そわそわ
春が来たから
やりたいことばっかりで
おおいそがし。
あれもこれも
おまけに目標に向かっている途中で
また新しい面白そうなことばっかり
見つけ出したりして。
キッチンにいる蛍のところへ
おやつを取りに
飲み物を見つけに
ひととき落ち着く止まり木を探しに──
その途中でいろんなことを教えてくれます。
風が強くても勇敢に飛び出していって
あわてて戻って来たり、
ときどきは狙い通りの目的を達成して
持ち帰るトロフィーはいっぱい。
お土産話や
いい形の小石や
良く片付いたお部屋へ招待もしてくれます。
蛍はだいたい
居心地のいい場所で
ぼうっとしているだけなのに──
こんなにたくさんの出会いがあっていいのでしょうか?
将来は、お料理を出して
お話を聞くお仕事でも目指したら楽しいかな?
茶店のマスターとして凛々しい姿を見せる蛍だとか
そんなことがあったら
おうちのみんなは毎日通ってくれるかしら──
こうして楽しく過ごしているのも
大忙しの春が来たから
マイペースな蛍をみんなが必要としているからというのもあるから
もうすぐ暇になってしまいそう。
いつも頼ってくれたらな!
もう、せっかくだし
春が来たことだし
自分も何か始めてみようか!?
それとも
こんなふうに遊びに来る場所にしてくれて
誰かのお役に立っているなら──
別にあわてることはないのかな?
なにもかも、春の陽気がいけないの。
たぶんそう。
ぼんやり考えて
ふらふらしている感じ──
楽しい夢を見ているような気配。
ずっとこんな日が、
家族のみんながわくわくしているのを
そばで見ていられる毎日が続くようにと
特に何も難しいことが考えられない陽気の中で
誘われるように──
気持ちは向かっていく。
明日もまた蛍はのんびりしているはずです。
変わらずおうちの中で──都合のいい考え事をして
夢の中にいるのだと思います。
ちょっと恥ずかしいですね。

春風

『春が苦手』
変わっていく生活──
新しい出会いと
新しい友達。
別れなくてはいけない人たちと
さみしい気持ち──
もともと、そんなに
器用でもないし落ち着きもないから
新生活の準備も
片付けもちっとも進まない。
要領の良さも手際の良さも
私ではないだれかのこと。
小さな春風は──
弱い春風は、
なんにもできない春風は
困ってばかりいて、
ふるえていて──
寒かった頃みたいに布団をかぶっていたといいます。
日の当たるお庭で遊ぶみんなを見つめながら、
ほころぶ花の香りを知りながら
春風はいつも
まわりのみんなに助けてもらって
泣きながら歩いてきたといいます。
鼻をすすり上げて──
家族がいてくれて
よかったと話しながら
そうしてやっと
ついに笑顔になる
春先の春風は──
その後もずっと、
なんにも変わることなく
何年も──
そしてきっとたぶん
これからも。
春が来るたびに困った顔をして
助けてもらわないとできないことばかり。
ほんとにもう──
どうしてこんなに急にいろいろ
変わってしまうんだろう?
ぽかぽか陽気で気持ちがいいから
ついついみんな
はりきってしまうのでしょうか?
今年もまた
だんだんあたたかく、
ときどきまた寒さが戻って来る──
こんな季節に
今までよりはうまくやってるみたいだと
みんなは少し──春風を見て安心するそうです。
ちっともそんなわけではないのに
ふしぎですね?
変わってしまうことばかりであわてていた春風は
助けてくれる人をたくさん見つけて
ほっとすることも増えたらしい──
お礼をしたいことも増えて行ってしまうらしい。
落ち着きのない春風にできるでしょうか?
また──布団をかぶって困ったり泣いたり。
ぽかぽか陽気の日を
一人では何もできない春風は──みんなと過ごしている。
あっ! また助けを求めるみたいにして手をつなごうとしています!
あなたはどうか──せめて、さみしがりの春風が泣き止むまでは
あたたかな手を離さないでいて──
この春もどうか、そばにいてくれますように。

あさひ

『ぽかぽか』
ほわほわ
ふわわぁぁ
ふいー。
──んっ
おおっ!?
ぷいいん──
ぽっぷ
ぷいいーん──
おおー。
そっ──
じーっ
ええーい!
あばばばっ!
(あったか
 ぽかぽかのおひる。
 みんなもたのしそうに
 あっちにいってはこっちにいって──
 あっちからおにいちゃんがきて
 こっちからはるかがきて
 いいな!
 あさひもなんだか
 あたらしいなにかをはじめたくなってきた──
 やるきがでてきた!
 こっそりおにいちゃんにちかづいて
 とびつくいたずらとか
 したくなってきたぞ!
 それーっ!)

立夏

『あれれ!?』
どうしたことだ!?
春らしく落ち着いて
のどかなわがやの風景──
忙しく新生活の準備が
あれこれと進む中でも
つぼみがふくらみ──
色づく窓のそばに
並んで座るふたり。
大人っぽくて
余裕がある時間を過ごして──
絵のような景色の中に
たたずむあれは
オニーチャンと氷柱ちゃん。
きのうはついに
氷柱おねーちゃんがうららかな春を楽しむ
大人になってしまった!
立夏ももうすぐ──
いや、やがては──
たぶん、いつかそのうちに──
散らかったお部屋を片付け
進級の準備も済ませて
春のおしゃれな装いと
落ち着きを身に着けた中学生として
春の近づく窓際で
オニーチャンと楽しくおしゃべりをして
過ごすときが来るのだ!
氷柱おねーちゃんを見ていたらそんな気がしてきた!
と思っていたのに
どうしたの?
あたたかな日なたでのんびりしているのは
春風おねーちゃんで、
ふたりの行く先を聞いてみても
にっこりするだけで答えようとはしない。
ああ、こんなとき
立夏にも──
おすすめしてもらったお茶をゆっくり楽しみながら
待っている余裕があったらな!
どこにいるのかと家の中を駆け回って
ほこりだらけになって
帰ってきた氷柱おねーちゃんをおどろかせたヨ!
後から聞いた話によると
どうも春風おねーちゃんが
言葉たくみにいい陽気の中を歩いてみたらと
お買い物を頼んで──
だいぶ重い荷物を抱えて駆けまわることになったそうだ。
そういうのも
春らしい過ごしかたなのだろうか?
氷柱ちゃんはずっと考え込んでいたのだった──
オニーチャンはどこへ行っていたのかな?
やっぱり春風おねーちゃんの手のひらの上だったの?
立夏はね──適当に受け答えをしていたら
やっぱりなにやらお手伝いを言いつけられていて
明日はどうも大変そうだヨ!
春らしく、ばたばたあわててみたり
おやつのごほうびもあると聞いてうきうきしながら
立夏はまた
今年の春もくりかえすおねだり──
おにーちゃん
たーすーけてー!

氷柱

『のどかな日』
あっちのほうに走っていったのは
春風姉様ね。
春が近づいて陽気も良いと
用事も増える、やりたいことも多くなる──
私が手伝えることだったらいいけど
そんなに都合がよくはいかない場合も
多いわよね──
ヒカル姉様は落ち着いてみんなの分も
コーヒーを用意して待っている。
霙姉様も──たぶんみんなのために
お茶請けを真剣に選んでいるみたいだし
やっぱりなんだかんだ
忙しく過ごすのも春らしい感じはするわね。
別に私みたいに
何にも変わらない日を過ごしているような子も
たくさんいて
それはそれで別にかまわないんだけど
せっかくだから──
とか
今しかできないことかもしれないし、
とか──
私の下僕もやっぱりこの時期は
何か始めてみたかったり
春らしい用事があったりするの?
なんだかんだ、私より年上なのは間違いない──
この時期の有意義な過ごし方を
ひとつくらいは知っているかもしれないわ。
ちょうどこんないいところに
コーヒーとお茶請けが
他愛無い話題を歓迎しながら待っているよう──
のんびりと日向ぼっこを楽しむのも
せわしない春を堪能するのに
ちょうどいいという話もあるわ。
天使氷柱、14歳──
一年ぶりで久しぶりに迎える春。
まだこの季節の過ごし方に慣れていないと言ったら
恥ずかしいのかしら──?
いろんな話を聞いてみたい時もあるわ──春が来たからね。

ヒカル

『私たちのこれから』
小雨は元気になったみたいでよかったな。
あの厳しい冬を乗り越えてきたんだから
春が近い今の時期なんて
そんなにたいしたことはない──
と油断した時が
いちばんあぶない。
スポーツでも、気を抜いた瞬間に
怪我につながる危険な事態が起こりやすい。
そうならないように普段からしっかり
動きを体に教えるために真剣に練習するんだけど──
言うほど簡単なことじゃないと
そんなのみんな知っている通り。
だからあたたかくなってきたから
もう大丈夫だとたかをくくるのは──
風邪のやつらの思うつぼだ。
小雨は早めに自分の体を大事にできていいことだ。
私たちも見習わないといけないけど
それも言うほど簡単じゃないことのひとつ。
だから、いよいよ春を迎えて
浮かれがちな──楽しいことがこれからいっぱいある気がしてくる
こんな時にこそ!
気を引き締めて
毎日をしっかり過ごすこと。
今までやってこれたのと同じように
みんなと一緒に
しっかり声をかけ合って
よくできていたらほめたりもして
ときどきは元気すぎて
困ったり笑ってしまったりして──
もう少ししたら
今こんなふうに寒くて怖がっているのなんて
不思議に思うくらい──
気持ちのいい風が吹きはじめて
もうすっかり
大変だった日々も忘れていく──
早くそうなるといいけど
まだまだだ!
何事もそんなに簡単には変わらないものだ──
ちゃんと自分の体に気を付けて元気になった小雨のごほうびに
暖かい時間に散歩に行くのなら
ちゃんと上着もはおって──
早めに帰って来るんだぞ!
家の中でまた元気すぎて私たちを困らせている子たちは
相変わらずだからな。
この子たちと一緒にしっかり元気に春を迎えないと──
その時は、今すぐには
やってこないかもしれないけれど
大丈夫──私たちは支え合いながら、しっかりやっている。

小雨

『寒さは続く』
小雨です。
暖かくなったと思ったら
また寒い日が来て
繰り返しながら春に近づく──
わかっていてもやっぱり
寒い日は大変ですね!
いつもはお部屋にこもりがちで
一人も多い小雨だけど──
こういう日は、暖房のきいたリビングや
温かな飲み物やおやつを用意しているキッチンに
出入りすることも多くて
少し前の冬の日以来の
にぎやかさに囲まれる小雨になりました。
お料理でお手伝いできることも多いし──
もう春が近いのに
この時期に風邪をひく子がいたらかわいそう。
たくさん栄養をとってもらおう──
野菜もおいしく食べてもらえるようにできたらな──
そんなふうに、春風お姉ちゃんとお話をしたりもしています。
久しぶりに
少し、いそがしい──
だけど小雨でも
みんなが冬を乗り越える手助けができるなら
もうちょっとだけ──お手伝いも増やしていきたい。
そう考えた寒い日でした。
急に無理をしすぎて
疲れたのかもしれない──
今日はなんだか
早くお布団に入ったほうがいい気がしています。
まさかみんなのことばっかり気にして
小雨が風邪をひいてしまうなんてことが
あったりしたら──
せっかくの春なのに
みんなで一緒にいられないとしたら
悲しいのは──小雨も同じ。
張り切りすぎて
無理をしすぎて
結局、みんなに心配をかけて
自分でも心細い思いをして──
でも、あの長い冬を乗り越えてきたのは
小雨も同じ──
みんなと変わらない。
大丈夫──具合が悪くならないうちに
しっかり元気を取り戻すのも
きっと得意になっているはずです──
お兄ちゃん──もしも明日が春みたいに暖かい日で、
そして小雨が風邪なんて吹き飛ばして
お部屋を出て行ったら──
きっとまた、一人になって
いつもみたいにお部屋へ戻っていってしまうまでの
短いあいだ──
一緒にいてくれますか?
みんなで春を迎えられたことを隣で喜んでもいいですか──
それを考えると
少し元気になる気がするんです。
長い冬は──みんなと支え合って過ごしたから
人に頼ることも多かったから、
小雨はときどき甘えるようになってしまったのかもしれません。
そんなことってあるのでしょうか?