立夏

『探索の旅』
わわわっ!
また麗ちゃんの姿が
音もなく消えた!
おやつのチョコレートクッキー製作中の
謎の事件──
これがまさか
噂に聞く神隠し?
それとも
いつものストライキ
バレンタインが苦手で
甘い甘い雰囲気から
ちょくちょく逃げちゃう麗ちゃん。
あんなに好きなものだったら
ラブラブなのにネ。
え!?
ストライキはしないって
言ってたのー!?
じゃあちょっと
すねて一人になりたいだけ?
麗ちゃんはいつも
一生懸命。
あの子の辞書には
まあいいか!
の文字と
ほどほど!
の文字の二つが
見つかりにくい気がする──
リッカもそういうところあるから
わかるなあ!
どうしても欲しいお菓子の前で
だだをこねた子供時代や、
世界に一つしかない大事なものを前に
どうしても一緒にいてほしいとだだをこねる毎日──
きっと麗ちゃんの世界には
他の何にも代えられない
大事なものがいっぱいあるの。
とっても大変そう。
リッカはハラハラしながら
見つめている──
その大事な
いとおしいきらきらするようなものを。
手を貸して
助けてあげたくなることが時々ある何かを──
そして、いつか
ぜんぜん何にも折れず、くじけなかった
麗ちゃんが胸を張って
どうだ!
自分の信じてきた生き方は
何も間違っていなかっただろう、
大事なものを
守り抜いたぞって
どやあするところに居合わせて
おそれいりましたと
頭を撫でてみる日が来たらとってもいい。
いいないいな、
早くそうなるといいな!
さあ、早く探さなくっちゃ──
立夏の大事な
難しくてかわいい麗ちゃん。
どこに隠れても
リッカは逃がさない。
見つけ出すまで追いかけるんだーい。

『闘争』
人は労働の対価に
賃金を求め
生活が成り立つようになってゆく。
そもそも、
貨幣文化の成り立ちや
貧富の差の発生を
調べるにあたって
この世はままならないもの、
そして不公平があっても
是正する方向に人は動くことができるという
歴史だけが伝えられる
重みのある事実を知るのよ。
さて、労働条件において
合意が成り立たなかった場合、
弱い立場の人間がとりうる手段の一つとして
資本に変えうる労働力の行使を
話し合いによる交渉を前提としたうえで
一時的に供給停止する、
いわゆるストライキ
行われる場合がある──
……
なんて顔をしているのよ。
心配しなくても
ちゃんとバレンタインのチョコレートは
用意するつもりよ。
私たちの家で
男の人はたった一人。
何かと大変な毎日を過ごしているみたいだし
日頃の感謝を伝える意味でも、
あと、お祭り好きの私の家族が
ちょっとしたことにかこつけて
大さわぎをしたがるのは
常に問題ばかりがあるわけではないから
たまにはいいか──
くらいには思っているの。
こんな家族だから
それなりにお正月はきちんと
それらしい雰囲気で過ごせた。
クリスマスにもハロウィンにも
ほんのり食事は豪華になる──
そう考えると
たまにでもないわね。
大さわぎの
天地をひっくり返したような騒ぎは。
ストライキも──
ふと考えて
小学校の図書館を歩いてみただけよ。
いざという時に取りうる手段の一つとして
現実的に可能なのか──
フフ──調べると面白い話もあるの。
まだまだ春は遠く
星の瞬く夜は長い。
読書をして過ごすのだって、
気分を変えて
お菓子を作ってみるのも似たようなものだって
そう思うほうにしたほうが
面倒くさい時に
多少は──精神衛生上ましかもしれないもの。
今のところはおこづかいに不満もない。
日々巻き込まれる厄介な問題も
戦いを挑むことでしか決着できない
ほどでもない。
──この先もそう思って過ごしていくかどうか
そんなのは知らないけど──
小さい子が真似をしたらいけないから
お手本になるように過ごすのが
大家族における九女の立場。
こう見えても一応
頭においてはいるの──
えらいでしょ?

小雨

『決意』
ぶるぶる……
こ、これが
寒さではなくて
武者震い……
お兄ちゃん、小雨はやります。
できるかな──
お兄ちゃんに頼れないこと。
でも
やらなくちゃ──
あ!
お兄ちゃん!
あの──
ごめんなさい。
実は小雨は
お兄ちゃんに内緒のことがあって。
ううん!
そのうちちゃんと
お話しますけど。
って、
この甘い匂いで
気付いてしまったでしょうか。
ぱんぱんに荷物が詰まった
買い物袋から
どことなくビターな
カカオの香り。
……
おねがい、
あと一か月もないくらいの
間だけ──
知らないふりをしていてほしいんです。
不器用で
あわてんぼうの小雨が
フライングしたせいで
お兄ちゃんを驚かせてあげたいみんなの気持ちが
台無しになってしまったら
いけないので……
でも、本当のことを言うと
小雨はお兄ちゃんに頼らずに、
失敗しても話を聞いてくれる
人もいないままで──
成し遂げることができるのか、
とっても不安なの。
だけど、
だけど──
小雨はそうしたいと思ったの。
お兄ちゃん……
せめておなかを壊さないくらいのものが
作れるように
練習を頑張りますね。
よしっ!
小雨の今年最初の
大きな大きな目標は
お兄ちゃんのおなかを守る!
ぶるぶるするけど……
がんばります!

あさひ

『うりゃ!』
にゃーにゃ!
うりゃ!
あーたん
うりゃ!
おっおっ
おお~♪
ふっふ
ふ~ん♪
にゃーにゃ!
あんにゃ!
どぅわっぱー!
(おにーちゃん
 あさひのすきな
 たかいたかい
 してくださいな。
 わーい!
 たのしいぞ!
 たかいな!
 おにいちゃんのたかいたかいは
 せかいいちたかい!
 あさひがそらをとぶ──
 どこまでもたかくいける!)

ヒカル

『冬アイス』
冬になると食べたくなるのは
おでんにラーメン、
あんまんにたこやき。
それから──
なぜだか
アイスが食べたいときがある。
寒い季節に
冷たいものに挑戦したい我慢大会の気分なのか?
よく運動して温まった後の
自分へのごほうびが欲しいのか?
それともただ単純に
部屋を暖め
湯気の立つ熱い食事で
汗ばむくらいになった瞬間の──
自然な感情でいいのだろうか。
寒い寒い冬を乗り越えるために
体がアイスを求めるという矛盾。
吹雪がネットで調べた話だと
冬に好まれるアイスは
定番のバニラに加えて
チョコレートやラムレーズン。
高級感があり
濃厚な味わいが
みんなの好み。
とっておきの
特別な時間を演出するため。
どうも夏に食べるアイスと
冬場に私たちが用意するアイスは
違う傾向の食べ物と考えても
いいのかもしれない──
それが吹雪の分析だ。
さて、買い物に出て
仕入れて帰るアイスを
忘れないようにする工夫も
吹雪の考え。
マジックで手のひらに書く!
お店に入って消毒をする時に
きっと思い出すからな。
この工夫のおかげで──
チョコ、バニラ、雪見だいふくと口ずさみながら
街を歩かなくてもよくなったわけだ。
いや──果たしてそうだろうか。
声に出してはいないだろうか?
楽しみがこぼれる時の
にやにや笑いみたいに──
オマエは冬に食べたい特別なアイスはある?
あともうひとつくらいなら
忘れずに口に出して歩ける気がするよ──

追記

いや、予告の洗車機が大げさすぎてメカメカしいのが「子供向けアニメなのはわかるとして、ここまで!?」みたいに感動したので、ありえないみたいに書いちゃったけど、今見直したら大きい工場とかであれば、もしや実際こういう洗車機もあるのでしょうか。いや、どうかな……フィクションだからこそのトール・テールな表現も入っているようにも見えるし……そのあたりの日記の文章、後でまた修正するかもです……動きとか大きさのスケールとかいいなあと思います。黄金のニンジンを見るシーンにフィルム映像っぽい縦線が入ってる演出とか細かくて好き。そして予告を何度見ても、ヘリの墜落に続いて煙を抜けてくるあのメカはいったい何があったんだよ。

海晴

『かわいさ百点満点』
子供はいつだって
面白いものを見つけ出す
才能にあふれている。
面白い遊び──
お気に入りの本──
そしてお姉ちゃんの前を駆け抜け
見ている番組!
すごいわね──
最近、みんなが夢中になって見ているのは
羊毛フェルトでできたキャラクターを
生き生きと動かす
ストップモーションアニメ。
その名もかわいい『PUI PUI モルカー』は
見た目も動きもどこまでもかわいい!
驚いた時も
涙を流す時も
元気いっぱいに駆け抜ける時も
本当にいつも全力の子供みたいに愛らしい──
隅々まで力を入れている作品だから
細かい部分の発見をするのも楽しいし、
家の影にいてよく見ないと気が付かない
猫の動きまでさりげなくかわいい──
それに何より
見ている人を引き付ける力!
迫力のカーチェイスがあり
予告ではヘリコプターの墜落シーンで
煙や炎まですごい作り込み──
洗車機もあんなに大きくてよく動くのはやりすぎだけど
ここが見せ場だって
子供に伝えようという動機からくる説得力がすごいの!
なんだかとんでもないものを
見ている気分になるというか
私は一体何を
見ているんだというか
これは本当に子供に見せて
いいものなのだろうかと感じるほど──
それでいてユーモアやお話の温かさを
飽きさせないように次々に見せてくれるのが
いいのよね。
泣きそうな顔もかわいいけど
お仕事に戻ったときのとぼけながらもどこかきりりとした顔が
やっぱりいいと思ったよ──
かわいいものが大好きだと
言いにくい年齢を実感しているけれど
好きになったものは仕方がない!
小さな子供たちと一緒に楽しんで、
応援しています。
人間を乗せて毎日がんばれ!
けなげでかっこいい
モルカーへ。