ヒカル

『そういう日もある』
やはり
現れたか──
うまくいってるような
気がする時ほど
油断している隙を
見つけたように
忍び寄る。
夕凪のカバンから出てきた
見慣れぬ夏休みの宿題で、
夏休みが終わるまでに
すっきりきれいに
宿題を終わらせることは
まあたぶん
無理そうだなということになった。
今は手分けをして
手伝ったり
おやつの準備で
やる気を出させたりしている最中。
今年こそはと思っていた夕凪だけど、
誰にだって
いつだって──
そうきたか!
という事態は当たり前にやって来る。
それも、大変な時を
見事に狙いすまして
危機は必ず
そういう時に訪れるんだ。
昔から言うように──
野球は九回裏
ツーアウトから。
残り時間の
あと五秒が一番長い。
それは戦いに挑む者すべてに突きつけられる
厳しい掟だけど──
誰にでも平等な
その厳しさがあってこそ
必死であがく瞬間に
まだ誰も見たことのないドラマが生まれる──
まあ、夏休みの宿題で
具体的にどんなドラマがあるのか
聞かれてもわからないし
もしかしたら別に大したことは何も起こらないかもしれないけど。
がんばれ!
夕凪!
応援してるよ──
特にすごい感動の展開がなくっても
ちゃんと後で
褒めてあげるから
それでがまんしておいて。
よしよし。
がんばったな。
えらいぞ!
夕凪は確かに私の妹だ、って──
その時が来るのを楽しみに待っているよ。
なんだ?
オマエも褒めてほしいのか?
夏休みの宿題を終わらせてから、
やったな!
オマエならできると思っていたぞ──
くらいのことは言ってあげる。
よしよし、えらいぞって──
やる気は出た?
ちゃーんと
見ているから
安心するんだぞ。
夏休みもあとわずか。
全力で挑む戦いはこれからやってくるのかもしれないぞ──
がんばって!