氷柱

『冬の洗濯物』
あら!
まあ!
なんてこと!
私の愛する
下僕を囲んで
お手伝いの時間みたいね。
ふだんなら洗濯物をたたむなんて
地味な仕事は隙を見て逃げ出す
夕凪ちゃんでさえ
私の下僕がいれば喜んでやってくる。
膝の上を狙うあーちゃんまでやる気でいっぱい!
いいわね。
日々たゆまず教育を続けて
勤勉で素直な下僕を作り上げた甲斐があったというものだわ。
寒くて曇りがちな毎日に
貴重な晴れ間、
そんな日こそ洗濯物をぱぱっと乾かして片付けるのが
冬の日の効率的な過ごし方ね。
寒いのはつまらないけど
みんながちょっとがんばっているところを見るのは
悪くない気分だわ。
あ、ここに麗ちゃんがいたら男に洗濯物を触られると
かましいかもしれないわね。
でも家族なんだから気にすることなく
立ってるものは兄でも使ってあげればいいのにね。
感心なきょうだいへ
ねぎらいの言葉を贈りつつ
それでは私は飲み物でも持って部屋に戻ろうかしら。
え、何?
そうだ、ついでにみんなの飲み物でも持って来るのもいいかな。
違う?
洗濯物を?
たためですって!
私、ちょっと用事が……
べ、別に洗濯物もたためないくらい
そういう細かいことが苦手なんてことはないから!
夕凪よりは上手にたためるはずだし……
なんですって? 夕凪は練習して
だいぶ上手になった?
ふーん、そう。
えらいわね。
よしよし。
違うのよ!
本当に年末の試験とかもあって!
そっちに気が行って集中できないうわのそらの状態でお手伝いをして
どうなるかというと、
いえ、私だってやればできるんだからそんなにぐちゃぐちゃになんてならないけど!
芸術的で前衛的なオブジェを作って
あさひが大いなる目標に向かって喜んでのぼりだすなんてこと
そんなにたくさんあるわけじゃないけど!
それでもやらせようっていうの?
いいわよ!
やってやろうじゃないの!
後悔しない約束を先にしておいてもらうからね!