夕凪

『夕凪の悩み事』
お、お兄ちゃん!
どうしよう!
氷柱お姉ちゃんが──
あんなに優しかった
氷柱お姉ちゃんが──
不良になっちゃったよ!
たばこみたいにお菓子をくわえて
つーんとしちゃうし──
ごはんのときもぼうっとして
残してあるデザートのプリンを
食べないならちょうだいって夕凪が頼んだら
後で食べるのって怒られた!
うわーん、お兄ちゃん!
氷柱お姉ちゃんがいじわるする……
でも氷柱お姉ちゃんの気持ちもわかるの。
お兄ちゃんに伝えたいことがたくさんあって
がんばって書いた日記がなくなったら
考えただけで
夕凪はしゅーんとしちゃう。
もしもお兄ちゃんに日記を読んでもらえなかったら
そんなあとか言って落ち込むし
うわーんって泣くし
ショックでガビーンみたいな音も聞こえてきて
お兄ちゃん助けてーって言っちゃうよ。
えっ!?
それはいつものこと!?
そ、そんなあ……
うう……うわーん!
お兄ちゃん助けて!
だからね
氷柱お姉ちゃんもすっかり元気をなくして
夕凪がくすぐったら
夕凪はいつもーとか言わないし
ちっとも笑わないで
こらーって追いかけてくるの。
こんなの……
氷柱お姉ちゃんじゃない!
いつもの氷柱お姉ちゃんに戻って
夕凪はいつもしょうがないって言いながら
こらーって追いかけてきて!
お兄ちゃんも
氷柱ちゃんの目を見た?
わんわんわんわん
とっても悲しそうに
泣いた後みたいに赤くなって
ほら、こんなふうに──
ってこれ、夕凪の隣にいるのは
本に夢中になって夜更かしした星花ちゃんと
いつもきらきら目がきれいな吹雪ちゃんじゃん!
二人ともすごいよねえ。
夕凪は夜更かしもできないしきれいでもないし……
いつも明るくて元気なのがとりえくらいしか褒めてもらえない……
でも二人がすごいけど
氷柱お姉ちゃんのことでは参考にならないみたいなの。
やっぱり頼れるのはお兄ちゃんしかいない!
もしも氷柱お姉ちゃんの日記を見つけたら
見つけたよって感想を伝えたらいいの。
夕凪みたいに見つけたふりをして適当に褒めたら怒られちゃう。
氷柱お姉ちゃんは夕凪の言う適当なことにすごく勘が鋭いところだけは
しくしく泣いた後でもちっとも変わっていないみたいだからねっ!