小雨

『近づく』
連休の一日目です。
これといって特別な予定はなく
おうちの中にいて
お手伝いができたら楽しい
のんびりした時間が流れる日。
といって、
台風が近づいていることを考えたら
たぶん、今日のうちからこんなに焦ってばかりいる必要はないのに
落ち着いていられる気持ちにも
なかなかなれなくて。
怖いですよね。
台風。
大きな台風なのだそうです。
どうすればいいのかなって
会う人みんなに相談しないではいられなくて。
それで、しばらく遊んであげていた小さい子たちも
台風はまだだから、
って
小雨を元気付けてくれました。
台風が近づくとうずうずしてしまう
立夏ちゃんも、
まだ、灰色の曇り空も薄い色で
そんなに台風って感じがしない、
今日明日くらいはそんなに心配しなくてもよさそうと言っています。
それでも小雨は
あわててしまって
秋を過ごすための大切な服を用意するお針子の仕事も
落ち着いてできないし
たたんでタンスにしまうお手伝いも
大嵐で濡れたとき
すぐに取り出せるようにしておいたらいいかなって考えすぎて
つい手が止まってばかりで、なかなか進まなかったんです。
できたことといったら
台風の前に着替えをタンスから取り出せるようにって
霙お姉ちゃんのお部屋の片づけを手伝えたくらい。
あれ?
でも霙お姉ちゃんは
それだと今まで着替えをどうしていたんだろう……
別のところにしまってあったのでしょうか?
タンスの服も取り出せるようになって
小雨も、あんまり大きなことはしていないけれど
ほっと一仕事できた気分でした。
やっぱり、霙お姉ちゃんが言うみたいに
連休明けの火曜日は、今度こそ休校になるって
お兄ちゃんも思いますか?
小雨のおかげで台風の日も部屋でゆっくり休める、と
もう休校になると決まっているような話をしています。
そうなのかな……
なんとなくそわそわ落ち着かない休日を
小雨が一人で迷い続けているようで
麗ちゃんにも言われました。
みんな考えているから大丈夫、って。
万が一のときの非常食を確認しようとパントリーに向かった人が
最近買ったばかりだということも忘れたみたいに
真剣に期限を見直していて
蛍姉様を薄暗いところに連れて行くから何事かと思った、
あの人は掃除も片付けも苦手みたいで
パントリーを調べるにも人に頼ってばかりだったから
そういう時にちゃんと気を使える小雨ちゃんもいればよかったのに、
と。
小雨もお手伝いできていたら
その時は、少しなら役に立ったのかな。
もしもお兄ちゃんのお手伝いをして
きちんと大切な仕事ができる自分を想像したら
顔が熱くなってくるようです。
でも、実際は
お兄ちゃんと狭いところで近くにいたら
小雨は緊張してしまって、何も言えなくなってしまうかもしれない。
そのほうがずっとありそうだな、
いつもそうだったな、
なんて考えて
少し悲しくなりました。
こうして日記で伝えることがなかったら
小雨の考えていることは
どうやっても全然お兄ちゃんに届かないままになってしまう。
文章にするだけなら、どうにか書くことはできる小雨です。
あんまり他のみんなより上手にできなくて
読みにくいかもしれません。
日記を書くのだって
言葉で伝えるよりは少しだけ得意かもしれないと思うだけで
それでもやっぱり
いちばん聞いていほしい小雨の気持ちの
いっぱいあるそのひとつも
きちんと形にできているか、考えたら不安になってしまう。
でも、小雨が人並みにできそうなことは他にあまりないので
この日記に思いを込める大切な時間が
小雨にもあることを忘れないでいたい。
不器用な読みにくい内容ばかりになってしまう小雨でも
なるべくがんばってみたいと思います。
今日は、あんまりそわそわしている小雨を見かねて
春風お姉ちゃんは
それならおつかいの用事があるから
台風が近づいているからってあわてすぎないで
いつも通りにできれば大丈夫だからお願いね、と任せてくれたお買い物。
今日はどっさり
秋の味覚のさつまいもを抱えて帰ってきました。
大きな歓声で小雨を出迎えてくれたみんなに
小雨もうれしくなって
なぜか涙まで出てきてしまう。
何も泣き出す理由なんてないはずなのに、おかしいですね。
明日は焼きいもやふかしいも作りをお手伝いするんです。
小雨ができることはあんまりなくて
このせいいっぱいで、家族のみんなが喜んでくれたら
それは小雨の一番大事な時間なんじゃないかと
大切な日記で何より伝えたい気持ちなのかどうか迷ったけれど
そんなことをなんとなく考えました、と
今日は書いてみます。