小雨

『ワールド』
今日のお皿洗い当番は
小雨と
霙お姉ちゃん。
たまにお皿を落とす
小雨と違って
霙お姉ちゃんは──
手さばきが素早くて
丁寧で、
みんなのお皿を
まるで自分のものみたいに大事に
ぴかぴかにしてくれる。
優しい性格なのだと
思います──
あんまり器用なほうではないのは
お料理や針仕事の時だとか
見ていても何となく伝わるけれど、
気が付くと
やっぱりそつなく
こなしている──
霙お姉ちゃんが言うには、
子供のころから
お手伝いをしてこの年まで大きくなったのと、
たまにお手伝いをさぼったり
遊びに夢中で帰りが遅くなったり
したときなど、
おしおきでさらに仕事を言いつけられることが
あったから──
慣れただけ。
なんでも後回しにしがちで
怠惰な性格は
あまりよくないと、
そういうお話でした。
まあ、でも──
と霙お姉ちゃんは続けるんです。
さぼって怒られるいけない子も
広大な宇宙から見れば
普通の子とそんなに変わらない小さな違いでしかないし、
鍛えられて人より皿洗いが丁寧でも
遠い星のただ一点の光の
目に見えないくらいの構成物だし、
手を滑らせるのもお皿を落とすのも
何もかも塵のように小さな失敗だと。
あの星と比べたら
家族の営みも
かげろうのように儚く
ただ愛しさだけを思うのだと──
はげましてくれたのでしょうか?
やっぱり優しい
小雨のお姉ちゃんです。
まだまだ小雨の世界は
大きな宇宙の
小さな星の
さらに小さな小雨の周りのできごとばかりで
せいいっぱい。
いつか──霙お姉ちゃんみたいな
かっこいいみんなのあこがれの姿に
近づける日は
来るのでしょうか?
うーん──
霙お姉ちゃんは、それはまだ誰にもわからないって
笑っていました。
お兄ちゃんも先のことはわからないって思う?
今日の、小雨の──
身の回りのことよりも少し遠くを思う
お皿洗いをした日の考え事でした。