観月

『虫の音』
今夜も
聞こえる──
お昼にみんなで遊んだ
お庭の方から
遠く近く
どことも知れず
届くのは
ころころ
さらさら
かわいい虫の鳴き声。
雨はやんだかの──
月は今夜も
明るいであろうか。
ここ数日、夜は冷えて
早くお布団に入るようになったから
わらわにはもう
夜のことは何も知ることはできぬ。
良い子で目を閉じると
静かな夜に聞こえてくるのは
きれいな歌──
昔の記録からすれば
百年前も
千年前も
人はこの優しい声を聴いて
秋の長い長い夜を過ごしたという──
もしかすると
もっと遠い昔から
鳴り続けていた音色──
なのに不思議なことは
こんなに良い歌を
昔から聞いていたというのに
人はまだ同じ歌を
まねて歌うことも難しい──
このきれいな音のする夜に
同じ歌を奏でて過ごすのは
いつか叶う夢であろうか。
それともわらわは
いい歌を聞きながら
今夜も聞こえると
喜んで──
兄じゃのもとに駆けて行くほうが
もっと楽しみで
面白そうだと
これからも大きくなっても──思うのだろうか。
またも夜は静かで
ただ虫の音ばかり。
わらわの家が迎えたのは
良い夜じゃ──