綿雪

『ひみつ』
氷柱お姉ちゃんが急にお泊りすることになったって
お兄ちゃんは聞いている?
夕方、着替えを持ちに帰ってきたから
お話はできたんだけど……
なんだかうつろな目をして
ぼそぼそつぶやく声。
まるで機械になってしまったような……
そういえば最近見た怖いお話で
人間が操り人形になっていました──
まさか氷柱お姉ちゃんも
ちょっぴりホラーで
何か怖い目にあってしまったの?
ぎゅっと袖をつかんだら
どこかぼんやりしながら氷柱お姉ちゃんは
そっと頭を撫でてくれました。
あたたかな手のひらは
ユキのお兄ちゃんと比べたらそこまで大きくはないけど
撫でてもらえるととってもうれしくなるの。
お兄ちゃんも試してみたらわかります!
子供っぽいからそんなことしないかな。
氷柱お姉ちゃんはすぐ帰ってくるって言ってました。
ユキと約束してくれたんだから
明日は学校が終わったら
走って帰ってきてくれるに違いない。
そして土日はいっぱいあそんでくれるの。
きっとそうです。
さくらちゃんも幼稚園で習ったお歌を聞いて欲しかったって
さみしそう。
にじちゃんも、かわいい絵を描いたの。
自分で考えたきれいな服。
みんなでおそろいで着るんですって。
だから氷柱お姉ちゃんだけ
知らなかったで済ますことはできません。
ユキが教えてあげるの。
にじちゃんの提案ですよって。
みんなかわいい服を着るんだよ。
お兄ちゃんはかっこいいのを着ます。
ホタお姉ちゃんが
楽しい日に間に合わせようと言ったので
雛祭りあたりがあやしいかも。
あんまりお留守にしていると
おどろきすぎてひっくりかえってしまうかもしれないから
ユキが教えてあげたいことがたくさんあります。
氷柱お姉ちゃんに聞いて欲しいことばかりが
おうちの中にいつでもぎっしり。
早く帰ってきてくれないと
みんなもユキも
さみしがってしまうから──
玄関で見つけたらすぐ走って行って
ずっと離れずにくっついて回り
氷柱お姉ちゃんを困らせてしまうので
そうならないように
お兄ちゃんも早く帰ってきてくれるように
ユキと一緒に祈ってね。